
ERPが中小企業に必要な理由
ERPは「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略で、企業の「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源を、適切に分配・管理するための基幹系情報システムです。
ERPを導入すると、会計・販売・在庫・人事など、企業の基幹業務を一元的に管理できます。各部門の業務データがリアルタイムで連携するため、作業の無駄や人的ミスを減らし、迅速な経営判断が可能に。
中小企業では、人材や時間といったリソースが限られているケースが多く、業務の属人化や部門間の情報断絶が課題となりがちです。ERPを導入すれば、業務の標準化や内容の可視化が進み、効率化と情報共有の両立も実現できます。
小規模企業でも導入効果を得やすい理由
近年のERPは「必要な機能だけを選べるモジュール型」や「スモールスタート可能なクラウド型」など、柔軟に導入できる製品が増えています。これにより、小規模な組織でも自社の業務にあった形で徐々に導入でき、段階的に業務改善を進めやすくなっています。
例えば、まず会計管理から導入し、次に販売管理や在庫管理などを段階的に統合することで、コストを抑えつつ全社最適を目指せます。こうした段階導入のしやすさも、中小企業にとってのERPの魅力の一つです。
中小企業でERP導入が進む3つの背景
かつては大企業だけのものであったERPが、中小企業にも広がっている理由は複数あります。ここでは導入が加速する背景を解説します。
クラウド型ERPの登場で導入ハードルが低下
従来のERPはサーバの構築や保守に多大なコストがかかる「オンプレミス型」が主流でしたが、現在はインターネット経由で利用できる「クラウド型ERP」が主流となっています。これにより、自社でサーバをもたずに初期投資を抑えて導入できるため、中小企業でも現実的な選択肢となりました。
さらにクラウド型は短期間での稼働が可能で、運用やアップデートもベンダーが担うため、IT部門が手薄な企業でも安心して導入できるのが特徴です。
複雑化する業務と法令対応ニーズの高まり
業務の多様化や法令対応へのプレッシャーも、ERP導入が進む一因です。例えばJ-SOX(日本版SOX法)や電子帳簿保存法など、内部統制や法定要件への対応が求められるなか、ERPは「アクセス制御」「ログ管理」「承認フロー」といった機能を通じて法令遵守をサポートします。
中小企業においても、取引先や親会社の要請によりコンプライアンス体制の整備が求められるケースが増えており、ERPによる業務の標準化が解決策となっています。
補助金・助成金の活用で導入しやすくなった
中小企業向けのIT導入支援制度や補助金の存在も、ERP導入を後押ししています。例えば「IT導入補助金」では、ERPのような基幹業務ソフトの導入に対し、導入費用の一部が補助される仕組みがあります。
これにより、これまで費用面で導入を躊躇していた中小企業でも、金銭的ハードルを下げてシステム化に踏み出すことが可能になっています。補助金対象の製品は事前に登録されたものに限られるため、製品選定時には対象製品かどうかを確認しておくとよいでしょう。
中小企業が活用できる補助金については、以下の記事でも解説しているので一読ください。
中小企業向けERPのシェアと導入動向
近年、クラウド技術の発展により、中小企業でもERPの導入が進んでいます。ITトレンドが独自に調査した2025年7月までの過去一年間のERP資料請求ユーザー属性データによると、「従業員10名未満」「10名以上50名未満」の小規模企業が全体の約40%を占めていました。
さらに「50名以上100名未満」「100名以上250名未満」の中規模企業も含めると、全体の約70%以上に達しています。かつては大企業が中心だったERP市場が、現在では中小企業への導入が確実に広がっていることがうかがえます。

中小企業がERPを導入するメリット
中小企業では「人手不足」「業務の属人化」「部門間の連携不足」など、大企業とは異なる課題を抱えているケースが多く見られます。ERPは、そうした中小企業特有の悩みに対し、業務の効率化や体制整備を支援する有効なツールです。
ここでは、中小企業だからこそ得られるERP導入のメリットを整理します。
- ●担当者が限られるなかでも、業務を一元化することで作業負担を大幅に軽減できる
- ●属人化した業務の手順を可視化・標準化し、引き継ぎや育成がスムーズになる
- ●会計・販売・在庫などの情報が連携し、少人数でも的確な経営判断が可能になる
- ●クラウド型ERPなら、自社にIT人材がいなくても短期間・低コストで導入できる
- ●各部門間の連携が改善し、コミュニケーション工数や情報の重複管理を削減できる
- ●拠点が複数ある場合も、ERPで在庫や売上情報をリアルタイムに把握できる
- ● ITや法令対応に不慣れな企業でも、内部統制やコンプライアンス体制の強化が図れる
このように、ERPは中小企業にとって「限られた人材・資源でも効率よく業務を回せる仕組み」として大きな価値を発揮します。以下の記事では、ERPの導入メリットをはじめ、デメリットについても詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
中小企業におけるERP導入事例(口コミ)
実際にERPを導入した中小企業では、どのような課題を解決し、どのような成果を得ているのでしょうか。ここでは、ITトレンドに寄せられた口コミのなかから、業種別・企業規模別に導入事例を紹介します。自社と似た業態や規模の事例を参考にすることで、より導入後のイメージが具体化できるはずです。
システムを一元化したことで、数千件あるお客様のソフトウェアの保守管理もしやすくなり、内部統制の強化にも役立っています。(業種:卸売・小売業・商業(商社含む)、従業員数100名以上 250名未満)
日頃の取引とは違う特殊な依頼が来た際も、過去の似たような取引をすぐに検索でき、売上や在庫出庫の記録方法についてスピーディーに解決できた。(業種:その他、従業員数:100名以上 250名未満)
手配依頼がスムーズに行え、営業担当がその場で在庫状況に対応できるように。現場対応力が強化された。 (業種:食品、医薬、化粧品、従業員数100名以上 250名未満)
このように、ERPの導入によって中小企業でも業務効率化・内部統制強化・顧客対応力の向上といった具体的な成果が得られています。「自社にもあいそう」と思った方は、以下からERP製品の資料をまとめて取り寄せてみましょう。
中小企業におけるERP導入の失敗例と注意点
ERPは業務の標準化や効率化を支える有力なシステムですが、導入プロセスを誤ると十分な効果を得られず、かえって現場の負担や混乱が増してしまうケースもあります。特に中小企業では、IT人材や予算が限られているため、導入の進め方次第で成功・失敗が大きく分かれます。
ここでは、中小企業で起こりやすい失敗例と、その対策を紹介します。
【失敗例1】自社の業務にあわないERPを選んでしまった
中小企業では専任のIT担当がいないケースも多く、システム選定を「知名度」「価格」「ベンダーの営業トーク」などで決めてしまい、結果として業務フローにあわないERPを導入してしまうことがあります。これにより、現場での使い勝手が悪く、定着しない原因になります。
- ■対策
- 導入前に「今抱えている業務課題」と「どこまでシステム化したいか」を明確にしましょう。可能であれば、現場の担当者から業務フローをヒアリングし、無料トライアルやデモ画面を通じて、実務に合った操作性かを確認することが重要です。
【失敗例2】現場の理解と協力が得られなかった
中小企業では導入決定が経営者主導で行われることが多い一方で、実際に使うのは現場の担当者です。説明や研修を行わないまま導入を進めてしまうと、「現場の負担が増えた」「結局使われない」といった失敗につながることがあります。
- ■対策
- 早い段階から現場の担当者を巻き込み、業務上の悩みや改善要望を聞き取ることで、ERP導入の目的を共有しましょう。また、初期段階では操作に不安を抱えるケースも多いため、簡単なマニュアルや初期サポート体制を整えることも有効です。
【失敗例3】運用後の体制やスキルが不足していた
ERPは導入して終わりではなく、その後の運用・改善が重要です。中小企業では、社内にITスキルのある担当者がいない、運用の分担が不明確といった状況により、トラブル時の対応が遅れたり、改善が進まなかったりする例も見られます。
- ■対策
- 社内に専門担当を置けない場合でも、日常的な操作や問い合わせの窓口となる「ERP運用担当」を最低1名は設けましょう。ベンダーと定期的に連携できる窓口を明確にし、トラブル時の連絡フローや権限も事前に決めておくと安心です。
【失敗例4】コストばかりがかさみ、効果が見えなかった
「いろいろな機能があるから安心」と多機能なERPを導入したものの、実際には使いこなせず、期待した成果が出なかったというケースもあります。中小企業では業務がシンプルな分、必要な機能が限られている場合も多く、使わない機能にコストをかけるのは非効率です。
- ■対策
- 「自社に本当に必要な機能」に絞って導入できるモジュール型やスモールスタート対応のERPを選ぶとよいでしょう。まずは会計管理や在庫管理など優先度の高い分野から着手し、必要に応じて段階的に機能を追加していく方法がおすすめです。
このように、中小企業のERP導入では「限られた人材・予算・体制」のなかでどう成功させるかがカギとなります。製品を選ぶだけでなく、業務整理・社内理解・運用体制・ベンダーとの連携をセットで進めることが、導入成功のポイントです。
他社の失敗例や導入準備に関する詳しい情報は、以下の記事でも紹介しているので、あわせてご覧ください。
中小企業におけるERPの選び方と比較ポイント
中小企業では、限られた人員・予算の中で最大限の効果を得られる製品の選定が求められます。ここでは、製品選定時に重視すべきポイントを整理します。
自社の業務や業種にあった機能があるか
ERPに搭載されている機能は製品ごとに異なります。中小企業では「今すぐ必要な機能」と「将来的に必要になる機能」の両方を見極めることが重要です。業種によっても必要な機能は変わります。
- ●小売業:在庫連携・販売管理・POS連携
- ●製造業:生産管理・原価管理・在庫追跡
- ●サービス業:プロジェクト収支管理・契約管理・工数管理
このように、自社の業種・業務フローに適した機能をもつ製品を選ぶことで、導入直後から効果を実感しやすくなります。初期費用を抑えたい場合は、必要な機能だけを導入できる「モジュール型」のERPもおすすめです。
クラウド型かオンプレミス型か
ERPには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。中小企業では、初期費用の少なさや導入スピードからクラウド型を選ぶ企業が増えています。
- ●クラウド型:サーバ不要・短期間で稼働・月額制で始めやすい
- ●オンプレミス型:社内運用による高いカスタマイズ性・セキュリティ要件に強い
社内にIT人材がいるか、セキュリティ要件がどれほど厳しいかなど、自社の状況に応じて最適な方式を選びましょう。
サポート体制や導入実績は信頼できるか
ERPは導入して終わりではなく、継続的な運用や改善が求められます。ベンダーがどこまでサポートしてくれるか、導入後の支援内容まで確認しておくことが大切です。
特に中小企業ではIT専任者がいないケースも多いため、「導入時の設定支援」「操作トレーニング」「トラブル対応」のサポート範囲は要チェックです。また、同規模・同業種での導入実績があるかどうかも信頼性を見極めるポイントです。
費用対効果が見合うか
中小企業にとって、ERP導入にはコスト面のハードルがあるのも事実です。だからこそ「どの機能を、どの業務に使って、どの程度の工数削減や業務改善が見込めるか」を事前に試算し、費用対効果を明確にしておく必要があります。
安価な製品であっても、自社の業務とマッチしなければ結果的に非効率になります。逆に少し高額でも、必要な機能が揃っており、サポートや拡張性が充実していれば、中長期的に大きな効果が期待できる場合もあります。
以下の記事では、ERPの導入費用や保守費用の相場を解説しているので、あわせて参考にしてください。
ERP製品の導入を成功させるには、価格や知名度だけで判断するのではなく、自社の業務課題や成長戦略に照らし合わせて最適な製品を選ぶことが不可欠です。複数の製品を比較・検討しながら、自社に合ったERPを見極めましょう。以下のボタンよりERP製品の一括資料請求が可能です。ぜひご活用ください。
中小企業におすすめのERP製品を紹介
ここでは、中小企業でも導入しやすく、業務の効率化や情報の一元管理に役立つERP製品を紹介します。初期費用を抑えたクラウド型や、業種特化型、スモールスタートに対応した製品など、実際の導入事例が豊富なものをピックアップしています。
マネーフォワード クラウドERP
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウドERP」は、会計・人事・販売管理などの機能を一元化できるクラウド型ERPです。中小企業でも手軽にはじめられる設計で、スモールスタートからの段階導入に適しています。
JUST.DB
株式会社ジャストシステムが提供する「JUST.DB」は、ノーコードで業務アプリを構築できる柔軟性を備えたERPです。中小企業が抱える個別業務のシステム化に強みをもち、導入後の業務改善も図りやすい点が魅力です。
プロカン
株式会社PROCANが提供する「プロカン」は、建設・工事業向けに特化したERPで、原価管理や工程進捗の見える化をサポートします。少人数体制の中小建設業でも使いやすく、現場管理の効率化に効果を発揮します。
RobotERPツバイソ
ツバイソ株式会社が提供する「RobotERPツバイソ」は、会計・勤怠・販売などを一括管理可能なSaaS型の業務統合プラットフォームです。カスタマイズ性が高く、スタートアップや成長中の中小企業にも対応できます。
OBIC7
株式会社オービックが提供する「OBIC7」は、会計・人事・販売管理などの業務を柔軟に組み合わせて導入できる統合ERPです。中小企業にもスモールスタートが可能で、必要な機能だけを段階的に導入していけます。
以下のページでは、従業員規模50名~など規模に応じたERP製品を紹介しています。自社の規模感にあったタイプからおすすめ製品を選べるので、ぜひ参考にしてみてください。
ERP導入前に確認すべきチェックリスト
ERPを導入する際、ただ「便利そうだから」といった漠然とした理由で進めてしまうと、期待した効果が得られなかったり、現場での混乱を招いたりすることがあります。導入を成功させるためには、事前に整理しておくべきポイントを明確にし、社内で共有しておくことが重要です。
ERP導入前に確認しておくべき代表的な項目は、以下のとおりです。
- ●導入の目的や、解決したい業務課題は明確か
- ●ERPを適用する対象業務や部門はどこか
- ●社内に運用・管理できる体制は整っているか
- ●経営層・現場スタッフともに導入意義を理解しているか
- ●ベンダーとの連携やサポート体制に不安はないか
これらのポイントをもとに、自社の状況をチェックすることで、導入の失敗リスクを大きく減らせます。自社にあったERPを選ぶために、今すぐ資料を取り寄せて比較検討をはじめましょう。

まとめ
ERPは、業務の効率化や経営の見える化を実現する有力な選択肢ですが、導入すればすぐに効果が出るというものではありません。中小企業においては、自社にあった製品を見極め、運用体制や業務フローを整えることで、ようやく本来の力を発揮します。
そのためには、検討の初期段階から経営層・現場・IT担当者が一体となって課題を共有し、段階的に導入を進めることが大切です。また、製品選びに迷った際には、複数のERPを比較しながら、ベンダーや専門家の意見も活用して慎重に判断しましょう。
ERP導入は、業務全体を見直す絶好の機会です。中小企業が抱える「人手不足」や「属人化」といった課題に向き合いながら、自社の将来に適したERPを選び、確実な一歩を踏み出していきましょう。
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