Wi-FiでIP電話を安定運用するための条件(チェックリスト)
Wi-FiでのIP電話運用は、いくつかの条件を満たせば実用域に達します。以下のチェックリストで合否を確認してみてください。
- ●帯域と規格:5GHz(可能ならWi-Fi 6/6E)。2.4GHzは音声用では使わない。
- ●通話品質KPI:片道遅延150ms以下/ジッタ30ms以下/パケット損失1%以下を目安。
- ●AP(アクセスポイント)設計とローミング:-67dBm以上を保てるAP密度。802.11k/v/rの活用やローミング閾値の最適化。
- ●QoS:WMM(音声優先)を有効化。可能なら音声用の帯域確保。
- ●ネットワーク分離:音声専用SSID/VLANでデータ系と分離。
- ●同時通話の帯域見積り:G.711で1通話あたり約80~100kbps、G.729で約30~40kbps × 最大同時通話数。
- ●機器設定:ルーターのSIP ALG無効、適切なチャネル設計、最新ファーム適用。
条件を満たせる場合は、Wi-Fi対応のIP電話をさっそく比較しましょう。

IP電話の接続にWi-Fiを採用するメリット・デメリット
ここでは、IP電話をWi-Fiで接続する際のメリットとデメリットを整理します。
メリット:接続・通信の自由度が高い
Wi-Fiを使えばケーブルは必要ありません。そのため、IP電話の可動域が広がり持ち運びが容易になります。ケーブルにものが引っかかったり、汚れがたまったりする心配もありません。
また、有線では電話機の台数分だけケーブルを用意しなければなりませんが、Wi-Fiなら複数の電話機をまとめて接続できます。同時に接続できる電話機の数は製品によって異なります。しかし、利用する電話機の数に合わせて製品を選べば安く済むでしょう。
デメリット:通話の安定性が低い
オフィスに複数のアクセスポイントを設置している場合、もっとも近い位置のものを使うことになります。つまり、通話しながら移動すると、アクセスポイントとの距離の変化に伴って接続先が変わります。その際、通信が途切れるのが難点です。また、移動しなくても、アクセスポイントと距離が離れたり途中に障害物があったりすると、通信が安定しません。
そのほか、同じ周波数の機器から影響を受けることもあります。たとえば、Wi-Fiに使われている2.4GHz帯チャンネルは、電子レンジなどの機器でも利用されています。同時に利用すると悪影響を受け、通信の遅延や途切れが生じる可能性があるため気をつけましょう。
IP電話の価格や機能、選び方は以下の記事で詳しく解説しています。導入検討の参考にしてください。
Wi-Fi以外の接続方式(有線LAN・5G/4G)
上述したように、Wi-Fiを利用したIP電話の接続にはメリットがある一方で、通話の安定性などの課題もあります。用途や社内ネットワークの実情によっては、ほかの方式のほうが成果につながる場合も少なくありません。
ここでは、オフィス基盤に強い有線LANと、外出・拠点分散に強い5G/4G(クラウドPBX/スマホ内線化)を中心に、選び方の目安を整理します。
有線LAN
有線LANは、IP電話機をLANケーブルでネットワークに接続する方式です。電波干渉やローミングの影響を受けず、遅延・ジッタを抑えやすいのが特徴です。固定席が多く通話品質とセキュリティを最優先するオフィスやコールセンターに適しています。さらに、PoE対応スイッチを用いれば電源工事を増やさずに導入でき、運用管理もシンプルです。
一方で、配線の取り回しや増設時のレイアウト制約はデメリットです。席替えや島増設のたびにケーブル敷設やスイッチポートの確保が必要になります。可搬性が必要なエリアはWi-Fiや5G/4G+内線アプリを併用しつつ、全体は有線を基盤にする構成が現実的です。
5G/4G(スマホ内線化・クラウドPBX)
スマートフォンの5G/4G(LTE)回線とクラウドPBX(内線アプリ)を組み合わせれば、オフィス外でも安定して発着信できます。Wi-Fiのアクセスポイント間ローミングの影響を受けにくく、拠点分散や外出が多い組織に向いています。
一方で、通信費や端末管理の運用設計が必要です。固定席中心・通話品質最優先の環境では、オフィス内は有線LANを基本に、外出時のみ5G/4G+内線アプリを併用する運用が現実的です。
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IP電話をWi-Fi接続する際によくある質問(FAQ)
IP電話をWi-Fiで使う際によくある疑問をまとめました。基礎ポイントを押さえて不安を解消し、最適な接続方式(Wi-Fi・有線・5G/4G)の判断材料にしてください。
- ■Q1. 2.4GHzと5GHzはどちらが通話向きですか?
- 原則は5GHz(可能ならWi-Fi 6/6E)を推奨します。2.4GHzは混雑や干渉が多く、遅延やジッタが増えやすいためです。
- ■Q2. 通話が途切れるときの即効対策はありますか?
- APの電波強度(-67dBm以上)とチャネル設計を見直し、WMM(音声優先)を有効化。ローミング設定(802.11k/v/r)とSIP ALG無効化も効果的です。
- ■Q3. 座席固定が多い場合の最適解はなんですか?
- 有線LAN(PoE対応)が最も安定し、セキュリティ面でも有利です。可搬性が必要な箇所のみWi-Fiまたは5G/4Gを併用します。
- ■Q4. Wi-Fi 6/6Eにすると通話品質はよくなりますか?
- 音質自体はコーデック依存ですが、Wi-Fi 6/6EはOFDMAなどで混雑時の遅延・ジッタに強く、5GHz/6GHz帯で干渉も回避しやすくなります。導入可能なら推奨です。
- ■Q5. 同時通話は何回線まで可能ですか?目安はありますか?
- 目安は「G.711で1通話80〜100kbps、G.729で30〜40kbps × 最大同時通話数」。AP1台あたりの実効スループットの20〜30%以内に収めると安定しやすいです。
IP電話の接続方式をWi-Fi以外からも検討しよう
IP電話はWi-Fiでも利用できますが、通話の安定性とセキュリティを重視するなら有線LANが基本です。外出が多い場合は5G/4G+クラウドPBXを併用すると、社外でも内線化できます。自社の用途とネットワーク環境に合わせて最適な方式を選びましょう。
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