フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、一定期間にあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻や労働時間を自ら決められる制度です。通勤ラッシュを避けて出社する、子どもの送迎にあわせて勤務時間を調整するなど、仕事と生活のバランスを取りやすい働き方として活用されています。
2019年4月施行の働き方改革関連法により、フレックスタイム制の清算期間の上限は1か月から3か月に延長されました。これにより、月をまたいで労働時間を調整しやすくなり、繁忙期と閑散期の差がある業務でも柔軟に運用しやすくなっています。
なお、フレックスタイム制ではコアタイムやフレキシブルタイムを設定する場合があります。ただし、これらは必ず設けなければならないものではなく、コアタイムを設けない「フルフレックス」として運用することも可能です。
コアタイム
コアタイムは、1日の中で必ず勤務しなければならない時間帯です。この時間帯は、企業と社員との間で結ばれる協定のもとに自由に設定可能です。例えば企業がコアタイムを10時~15時とした場合は、この5時間は必ず勤務しなければなりません。しかしそれ以外の時間は自由です。
フレキシブルタイム
フレキシブルタイムとは、労働者が自分の裁量で決められる時間帯のことです。定められたフレキシブルタイムの中から、働くべき時間を決めます。例えば6時~10時、16時~20時に設定されている場合は6時~10時の間でいつでも出勤が可能です。
フレックスタイム制の導入状況
厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によると、フレックスタイム制を採用している企業割合は8.3%です。企業規模別に見ると、1,000人以上の企業では34.5%、300~999人では22.6%、100~299人では11.5%、30~99人では4.9%となっており、企業規模が大きいほど導入割合が高い傾向にあります。
また、フレックスタイム制の適用を受ける労働者割合は11.1%です。柔軟な働き方への関心は高まっているものの、勤怠管理の複雑化や社内連携の難しさなどから、すべての企業で導入が進んでいるわけではありません。
フレックスタイム制のデメリットは?
近年、柔軟な働き方の実現が図られています。フレックスタイム制もその中で注目されている制度であり、導入している企業も少なくありません。しかし、出退勤時刻の自由さゆえにデメリットが生じることもあります。代表的なデメリットを5つ見ていきましょう。
自己管理が求められる
フレックスタイム制では、労働者が日々の始業・終業時刻を自分で決められるため、自己管理が重要になります。勤務時間を柔軟に調整できる一方で、生活リズムが乱れたり、業務の優先順位をつけにくくなったりする場合があります。
特に、チームで進める業務や納期管理が必要な業務では、各自の勤務予定を共有し、業務の進捗を見える化する仕組みが欠かせません。
社内での連携が取れなくなるおそれがある
フレックスタイム制を導入すると、社員が一堂に会する機会が減少します。その結果、情報共有が滞る可能性があります。
たとえば、午前10時までにチェックしてほしい書類があったとしましょう。しかし、チェックするスタッフが10時以降に出勤するようではとても間に合いません。メールなどで送って早めに見てもらう手もありますが、それではフレックスタイム制の自由度が損なわれます。
また、急な仕事が発生した際も大変です。担当者が不在であれば別の人が代理で担当しなければなりませんが、そうすると代理をした人の業務に遅延が生じるかもしれません。このような状況がたびたび発生すれば、社員はストレスを抱えるでしょう。個人の自由度と組織としての連携性は、両立が難しい場合があります。そのため、勤務予定の共有やコアタイムの設定など、連携を保つ工夫が必要です。
適切な顧客対応ができなくなるおそれがある
フレックスタイム制は社員にとって柔軟な働き方である一方、顧客対応の体制を十分に整えておく必要があります。したがって、フレックスタイム制による担当者不在などが続けば、顧客満足度が低下するおそれがあります。
また、取引先などの協力企業と連携する際も支障が生じることがあります。協力企業がフレックスタイム制などの柔軟な働き方に理解があるとは限りません。仮に理解があったとしても、こちらの時間に合わせてもらうのは非現実的です。だからといってこちらが協力企業に合わせれば、結果的に元の就業時間と変わらず、フレックスタイム制は形骸化するでしょう。
光熱費などの経費が増える
一般的に、設備やサービスの利用時間が長くなるほど、コストが増える可能性があります。たとえば、オンデマンドサービスは月単位ではなく年単位で契約するほうが安いケースがあります。
企業がビジネスを営む際に発生する光熱費などの経費も同様です。フレックスタイム制では各々の出退勤時刻が異なるため、結果的に照明や空調などの総使用時間が長くなります。使う人数が同じであるにもかかわらずコストが増えるのはもったいないことです。特に、中小企業にとっては大きな負担となることがあります。
勤怠管理が煩雑になる
従来のように、出退勤時刻が固定されている就業スタイルでは勤怠管理が簡単でした。たとえば、定時を超えれば自動的に残業に切り替わります。毎日同じアルゴリズムで管理すればよいため、機械化も容易でした。
一方、フレックスタイム制では勤怠管理が煩雑になります。清算期間内の総労働時間で残業時間を判断する必要があるため、固定時間制よりも集計が複雑になります。勤怠管理システムを新しいものに刷新しなければならないこともあります。
フレックスタイム制のメリットは?
フレックスタイム制には注意点がある一方で、メリットもあります。それにもかかわらず導入が進められているのは、メリットも大きいからです。 代表的なメリットを見ていきましょう。
ワークライフバランスの改善
ワークライフバランスの改善は、主に社員にとってのメリットです。仕事だけでなくプライベートの時間も充実させることで幸福度が向上します。ただし、これによって社員のストレスが軽減し、生産性の向上や離職率の低下といった効果が得られれば、企業にとってもメリットになります。
仕事の効率化
業務や業界によっては、仕事の量が大きく変動することがあります。仕事の量が変われば、業務の遂行に必要な労働時間も変わるでしょう。そこで、フレックスタイム制であれば必要に応じて労働時間を増減できるため、残業が発生しづらく、コストの無駄がなくなります。
フレックスタイム制導入にあたっての注意点
フレックスタイム制を導入するには、就業規則等に「始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる」旨を定めたうえで、労使協定を締結する必要があります。労使協定では、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間などを定めます。
コアタイムやフレキシブルタイムを設ける場合は、その時間帯も労使協定で定めます。ただし、コアタイムとフレキシブルタイムは必須ではありません。コアタイムを設けないフルフレックスとして運用することも可能です。
また、フレックスタイム制では、1日8時間・週40時間を超えて働いたからといって、ただちに時間外労働になるわけではありません。清算期間における実労働時間が法定労働時間の総枠を超えた場合に、時間外労働として扱います。時間外労働を行わせる場合は、通常の労働時間制度と同様に36協定の締結・届出が必要です。
フレックスタイム制の導入で失敗しないためのポイントは?
フレックスタイム制のメリットを活かしつつ、デメリットを抑えるにはどうすればよいのでしょうか。
コアタイムを設ける
フレックスタイム制を、とにかく出退勤時刻を自由に決められる制度と捉えている人も多いでしょう。しかし、完全に自由にする必要はありません。特定の時間帯は必ず働くようにし、それ以外の時間帯は各人が自由に決めてよいといった、一定の制限を設けている企業も多いです。
必ず働く時間帯をコアタイム、社員が自由に決められる時間帯をフレキシブルタイムと呼びます。多くの場合、コアタイムは午前10時〜午後3時あたりに定められます。社員間での連携が必要な業務はコアタイムに行い、個人で行う作業はフレキシブルタイムを割り当てることで、円滑に業務が進むでしょう。 ちなみに、コアタイムなしのフレックスタイム制は「フルフレックス」「スーパーフレックス」などと呼ばれることもあります。非常に自由度の高い制度ですが、前述した課題が生じやすいため、導入前に業務内容や連携体制を確認する必要があります。
適用範囲を明確にする
フレックスタイム制は、業界・業種によって向き・不向きがあります。たとえば、個人で作業する時間が長いエンジニアやデザイナーなどはフレックスタイム制が適しています。一方、法人営業などコミュニケーションが主体となる業務には、フレックスタイム制は向いていません。したがって、向き不向きを踏まえて適用範囲を明確にすることが大切です。ビジネスに支障が生じない範囲内でのみフレックスタイム制を導入しましょう。
ただし、フレックスタイム制の対象とならなかった社員にはフォローが必要です。なぜ対象とならなかったのか、もしフレックスタイム制を導入したらどのような不都合が生じるのかなどを説明し、納得してもらいましょう。
制度の管理がしやすい勤怠管理システムを使う
画一的な勤怠管理が難しいフレックスタイム制では、Excelなどを用いた手動での管理は大変でしょう。そこでおすすめなのが、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムの導入です。
近年の勤怠管理システムには、最初からフレックスタイム制への対応機能を備えた製品も少なくありません。労働時間の計算から残業代の算出まで、必要事項を入力すれば自動的に結果を出してくれます。そのほか、有給休暇の取得状況管理や、ICカード・生体認証を用いた打刻システムなど、柔軟な働き方を支援する機能が豊富に存在します。
勤怠管理システムの導入にはコストがかかるため、躊躇する人も多いでしょう。しかし、これによって柔軟な働き方や勤怠管理の効率化が実現すれば、コスト以上のメリットが返ってくるかもしれません。自社の場合はどの程度のメリットが得られそうなのか検討したうえで、勤怠管理システムの導入を考えてみましょう。
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フレックスタイム制は制度設計と勤怠管理が重要
フレックスタイム制には以下のデメリットがあります。
- 社員個人の生産性低下を招く
- 社内での連携が取れなくなる
- 適切な顧客対応ができなくなる
- 光熱費などの経費が増える
- 勤怠管理が煩雑になる
上記のデメリットを取り除くには、以下の工夫を施しましょう。
- コアタイムを設ける
- 適用範囲を明確にする
- フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを導入する
自社の働き方や業務内容にあわせて制度を設計し、無理なく運用できる体制を整えましょう。




