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決算個社コンサルティング/専門サービス2026年07月17日

【トランス・コスモス(証券コード:9715)徹底解説】2026年3月期 通期──売上3939億円・AI活用CX/BPOで営業利益14%増

【トランス・コスモス(証券コード:9715)徹底解説】2026年3月期 通期──売上3939億円・AI活用CX/BPOで営業利益14%増

トランス・コスモス株式会社は、CX(カスタマーエクスペリエンス)サービス・BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)・DX支援をグローバルに展開するビジネス変革支援企業です。国内外のコンタクトセンター運営を主力に、デジタルインテグレーション、ITサービス、EC運営支援など多岐にわたるサービスを提供し、アジアを中心とした海外展開にも注力しています。

本記事は、2026年3月期通期(2025年4月〜2026年3月)の決算をもとにした更新版です。前回記事(2026年3月期 第3四半期)時点では累計売上高2929億4百万円(+4.7%)・営業利益134億9百万円(+20.5%)を報告していましたが、通期では売上高3938億66百万円(前期比+4.8%)、営業利益165億58百万円(同+14.4%)、経常利益189億70百万円(同+21.0%)、純利益130億84百万円(同+15.5%)と増収増益を確保しました。

詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【トランス・コスモス(証券コード:9715)徹底解説】2026年3月期 通期──売上3939億円・AI活用CX/BPOで営業利益14%増

本記事では、FY2026通期の着地点、1年間を通じた市場・事業の変化、そして翌期(FY2027)に向けた成長シナリオを整理します。


1. FY2026年を振り返る市場・業界の変化

2025年4月から2026年3月にかけての1年間、BPO・CX市場においてAI活用による生産性向上が本格的な競争軸となりました。コンタクトセンター領域では、生成AIを活用したオペレーター支援ツールの実用化が急速に進み、従来の「人員増加→生産性向上」から「AI補助×人材最適化→コスト効率と品質の両立」へとビジネスモデルの転換が加速しました。雇用情勢・所得環境の改善を背景に国内景気は緩やかな回復基調を維持しましたが、中東情勢や米国の通商政策をめぐる動向が不確実性を高め、企業の業務効率化・コスト競争力強化ニーズは引き続き拡大しています。

このような環境のなかでトランス・コスモスは、独自のCXプラットフォーム「trans-DX for Support」の展開を継続し、導入企業を125社に拡大しました。音声認識ソリューション「transpeech」にAIによるオペレーター支援機能を追加してAIアシストソリューションへと進化させるとともに、デジタルインテグレーションサービスのクリエイティブ制作工程にAIを導入し業務効率化と上流マーケティング施策の拡充を実現しています。

海外展開においては、日本とASEAN拠点のCX人材を活かした「AIトレーニング・アノテーションサービス」を新設しました。中国語・日本語・韓国語に対応し、ファイナンスやエンジニアリングなど専門分野のデータ整備を行うこのサービスは、AI開発に不可欠な学習データ基盤の構築需要を取り込むものです。来期(FY2027)に向けては、AIと人材を組み合わせた「次世代BPO/CX」の提供モデルが一段と深化するものと見られます。


2. 業績推移:第3四半期から通期へ

前回記事(Q3累計)では売上高2929億4百万円(+4.7%)・営業利益134億9百万円(+20.5%)と二桁増益の好調な局面でした。通期では売上高3938億66百万円(+4.8%)・営業利益165億58百万円(+14.4%)となり、Q4単体では売上高1009億62百万円・営業利益31億49百万円を積み増しています。

Q3の高い増益率(+20.5%)が通期では+14.4%に落ち着いているのは、前期Q4が比較的高水準だったことによる前年比の平準化です。それでも前期通期(FY2025)との比較では、売上高は3758億49百万円から3938億66百万円へ+180億17百万円(+4.8%)、営業利益は144億75百万円から165億58百万円へ+20億83百万円(+14.4%)の改善となりました。営業利益率はFY2025の3.9%からFY2026の4.2%へ0.3ポイント改善しており、CXサービスおよびBPOサービスの収益性改善が全体利益を押し上げています。

セグメント別では、単体サービス(売上255,482百万円、+4.7%、セグメント利益86億87百万円、+22.1%)が最大の売上基盤を形成しつつ収益性も大きく改善しました。国内関係会社(売上470億92百万円、+8.8%、セグメント利益33億37百万円、+16.4%)はBPO合弁会社の受託範囲拡大や新規連結が貢献しています。海外関係会社(売上1054億43百万円、+3.1%、セグメント利益46億30百万円、-0.3%)は中華圏・韓国子会社の売上増が寄与したものの、東南アジア子会社の利益減少でわずかに減益となりました。


3. 直近決算の重要ポイント

FY2026通期の最大のハイライトは、CXサービス・BPOサービスの収益性が着実に改善し、営業利益が14.4%増を実現した点です。国内CX事業では、trans-DX for Supportの導入企業が125社に拡大し、デジタルコンタクトセンターの標準プラットフォームとしての地位を固めています。transpeechはAIによるオペレーター支援機能を追加し、コンタクトセンター業務の一元化・自動化を実現するオペレーター伴走型のAIアシストソリューションへと進化しました。加えて、AIを活用した新サービスとして「AIトレーニング・アノテーションサービス」の提供を開始し、AI開発の重要な外注先としての需要取り込みを図っています。

国内BPO事業では、物流DXソリューション「trans-logiManager」の機能拡充が進みました。2025年10月より提供を開始した同サービスは物流2024年問題への対策と法改正に対応するものですが、今期はドライバーの活動時間可視化や積載率の最大化を実現する「trans-logiManager SmartTracking」を2026年6月より提供開始することを決定しました。また、株式会社Arentと共同で建設現場データを自動統合・蓄積・活用するサービスプラットフォーム「Connectix Build」の開発も発表しています。サービス提供体制の強化に向けては、建設業・製造業を支援する「BPOセンター福岡大名」とインフラ構築需要の高まりに対応した「BPOセンター沖縄うらそえ」を新たに開設しました。

グローバル事業では、中国でグローバル展開する中国企業との取引拡大と日本進出支援サービスの強化が進みました。韓国では音声ボット「trans-AI VoiceBot」や生成AIによる会話データ分析ソリューション「trans-AI Analytics」の展開を継続しています。インドネシアでは「CXスクエア セトス」を開設してRPAサービス提供体制を整え、マレーシアではバックオフィス集約サービスの品質担保に向けてISO 9001を取得しました。インドではCogent E-Services Limitedと戦略的パートナーシップ契約を締結し、複数言語対応を実現してインド国内全域でのコンタクトセンターサービス提供を加速させます。翌期(FY2027)の業績予想は売上高4100億円(+4.1%)・営業利益168億円(+1.5%)・純利益135億円(+3.2%)であり、配当は今期140円から145円へ増配を予定しています。


4. 通期実績が示す収益モデルの現在地

トランス・コスモスの収益モデルは、コンタクトセンター運営(労働集約型)をベースに、DX化・AI化による付加価値向上で利益率を高めていく構造への転換途上にあります。FY2026通期では営業利益率4.2%という水準で、BPO業界の標準的な利益率帯(3〜6%)の中位に位置します。trans-DX for Supportの展開拡大とAI活用による生産性向上が、中期的に利益率を引き上げる原動力となると見られます。

財政面では、当連結会計年度末の総資産は前期末比158億81百万円増加の2238億65百万円となりました。現金及び預金や受取手形・売掛金の増加が主因です。純資産は1392億93百万円(自己資本比率57.3%)と財務基盤は引き続き堅固です。キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローは207億60百万円(前期比+34億45百万円)と現金創出力は高水準にあり、投資CF-90億33百万円を大きく上回っています。

中期的な成長戦略として、同社は「2035年度時価総額1兆円」という長期目標に向けた中期事業計画(2026年度〜2028年度)を新たに策定しました。「ビジネスモデルを進化、総合力を利益に換える」および「顧客基盤・サービスポートフォリオを拡充、次の成長へ」をテーマに掲げ、投資を継続しながら高収益なビジネスモデルへの転換を進めていきます。


5. 業界の注目ポイント

ポイント1:AIがBPOの生産性と付加価値を同時に引き上げる
コンタクトセンター・BPO業界では、AIの導入によりオペレーターの生産性が向上する一方、より高度な業務への人材シフトが進んでいます。AIが単純対応を自動化し、人間が複雑な対応や感情的なサポートに特化することで、サービス品質とコスト効率を同時に高めるモデルが主流になりつつあります。自社開発のAIソリューション(transpeech、trans-AI VoiceBot等)を持つ企業は顧客への提案力で差別化できます。

ポイント2:AIトレーニングデータ市場は高成長の新フロンティア
生成AI・LLMの開発・改善には、大量かつ高品質な学習データのアノテーション(注釈付け)が不可欠です。専門知識を持つ人材とグローバルな拠点展開を組み合わせたAIトレーニングサービスは、AI開発の重要な外注先として引き合いが増しています。トランス・コスモスが中国語・日本語・韓国語対応のAIトレーニングサービスを新設したのは、この成長市場への参入タイミングとして適切と見られます。

ポイント3:海外BPO拠点の活用でコスト競争力と専門性を両立
人件費の高騰が続く国内に対し、ASEANや中国の拠点では相対的に低コストで専門人材を確保できます。グローバルな拠点ネットワークを持つトランス・コスモスは、国内外の拠点を組み合わせて最適なコスト・品質バランスを実現できる点が競争力の源泉となっています。ただし、為替変動や各国の政治・経済リスクは海外事業の収益に影響を与えるため、地政学的リスク管理も重要な経営課題です。


6. ITトレンド編集部の考察

FY2026通期を一言で表すなら「AIと人材の融合で収益性改善が着実に進んだ1年」です。売上+4.8%に対して営業利益+14.4%、経常利益+21.0%という数字は、CX・BPO事業の利益率改善が本格化していることを示しています。trans-DX for Supportの導入拡大、transpeechのAI進化、AIトレーニングサービスの新設、そしてBPOセンターの新設と物流DXソリューションの拡充と、複数のイニシアチブが同時進行で収益改善に貢献しました。

翌期の売上+4.1%・営業利益+1.5%という予想は今期に比べると保守的に映りますが、中期事業計画(2026〜2028年度)の投資継続フェーズを織り込んだものと解釈できます。2035年度の時価総額1兆円という長期目標に向けては、AI活用による生産性向上と新サービス展開が着実に積み上がっていることが確認できる決算でした。AIによる生産性向上の果実が本格的に現れれば、予想を超える可能性も十分あります。

IT・業務視点では、BPO・CXという需要が底堅く続く市場においてAI活用で付加価値を高めているトランス・コスモスのポジションは、中期的な成長性を維持するものと考えられます。グローバル展開においてもインド市場への参入加速など新たな拠点開拓が進んでおり、次の成長ドライバーの土台が着々と整備されています。


7. まとめ

トランス・コスモス株式会社を一言で表すと、「AI活用でCX・BPOの付加価値を高め、グローバルに事業を拡大するデジタル変革支援企業」です。

2026年3月期通期(2025年4月〜2026年3月)の業績は、

  • 売上高3938億66百万円(前期比+4.8%)
  • 営業利益165億58百万円(同+14.4%)
  • 経常利益189億70百万円(同+21.0%)
  • 純利益130億84百万円(同+15.5%)

と増収増益を達成しました。trans-DX for Support導入125社、transpeechのAIアシスト進化、AIトレーニング・アノテーションサービスの新設、物流DX強化(trans-logiManager SmartTracking)、新BPOセンター開設(福岡大名・沖縄うらそえ)、インド市場への参入加速と、AI活用と拠点拡充が複数の収益改善に貢献しています。

  • 翌期(FY2027)売上高4100億円(+4.1%)・営業利益168億円(+1.5%)・純利益135億円(+3.2%)を計画
  • 配当は140円から145円へ増配予定
  • 中期事業計画(2026〜2028年度)始動、2035年度時価総額1兆円を長期目標に設定

IT・業務視点では、BPO×AIという組み合わせを深化させることで中期的な利益率向上が期待されます。

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