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決算個社卸売/小売/商社2026年08月04日

【株式会社いつも(証券コード:7694)徹底解説】2026年3月期 通期──営業利益2.6倍・純利益黒字転換、TikTok Shop先行投資が本格化

【株式会社いつも(証券コード:7694)徹底解説】2026年3月期 通期──営業利益2.6倍・純利益黒字転換、TikTok Shop先行投資が本格化

株式会社いつもは、ブランド・メーカー向けにEC事業の総合支援やD2C・ECプラットフォーム運営を展開する企業です。当社と連結子会社4社、非連結子会社2社で構成され、「Eコマースで、日本の未来をリードする」をミッションに掲げるECワンプラットフォーム単一事業を営んでいます。Oneコマースサービス、協業ブランドパートナーサービス、共創・自創バリューアップサービス、ECプラットフォームサービスの4つのサービス区分を通じて、ブランド・メーカーのEC運営を一気通貫で支援しています。

本記事は2026年3月期通期(2025年4月〜2026年3月)の連結決算をもとにした更新版です。今期の売上高は178億78百万円(前期比+28.2%)、営業利益は2億69百万円(同+262.3%)と大幅増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1億57百万円と、前期の98百万円の赤字から黒字転換を果たしました。

詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社いつも(7694)徹底解説】ブランド・メーカーのEC運営を一気通貫で支援する企業


1. 2026年3月期を振り返る市場・業界の変化

2025年4月から2026年3月にかけての日本経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善により穏やかな回復基調が続いた一方、米国の通商政策の影響や物価動向、期末に顕在化した中東情勢の緊迫化に伴う金融市場の変動など、先行きの不透明な状況が続きました。株式会社富士経済が公表した調査によれば、国内のEC(物販)市場規模は2025年の15.3兆円から2026年には15.8兆円に拡大すると見込まれています。ブランド・メーカー各社が継続的にECビジネス展開へ注力する流れは今後も続くと考えられます。

一方で、多くのブランド・メーカーはマーケティングの高度化・複雑化や競争激化により、データドリブンな投資判断や施策の精度・実行スピードの向上といった、これまで以上に高いレベルの戦略戦術を求められています。生成AIの導入によって事業成果と業務効率化を同時に実現するビジネスモデルへの変革をどう進めるかも、多くの企業にとって共通の課題となっています。

こうした環境のなかで存在感を増しているのが、TikTok Shopに代表されるソーシャルコマース領域です。検索サイトからの「目的型購買」に加え、ソーシャルメディアからの「発見型購買」が主要チャネルとして定着しつつあり、TikTok Shop日本市場のGMV(流通取引総額)は2026年中に年間2,300億円規模へ到達すると予測されています。株式会社いつもにとっても、この新しい購買チャネルへの対応が今期の重点課題となりました。


2. 業績推移

詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社いつも 2026年3月期 通期決算短信(PDF)

2026年3月期通期の売上高は178億78百万円となり、前期比+28.2%の増収となりました。四半期ごとの推移を見ると、第1四半期は前年同期比-2.6%の減収でスタートしたものの、第2四半期累計では+14.5%、第3四半期累計では+27.5%と増収幅が拡大し、通期で28.2%増という高い伸びに着地しています。年度を通じて増収ペースが加速した点が今期の特徴です。

利益面では、営業利益が2億69百万円(前期比+262.3%)と大幅に伸長しました。経常利益は2億49百万円(同+474.8%)とさらに高い伸び率を示しています。親会社株主に帰属する当期純利益は1億57百万円となり、前期に計上した98百万円の当期純損失から黒字転換を達成しました。

翌2027年3月期の業績予想は、売上高205億60百万円(前期比+15.0%)、営業利益3億26百万円(同+21.0%)、経常利益3億05百万円(同+22.2%)、純利益1億88百万円(同+19.6%)と、増収増益基調の継続を見込んでいます。無配方針は今期・翌期ともに継続する計画です。


3. 直近決算の重要ポイント

今期決算の最大のポイントは、増収と大幅な増益が同時に実現した点にあります。4つのサービス区分のうち、コア事業である協業ブランドパートナーサービスは、複数の新規ブランドが当期にローンチして大きく伸長し、売上高130億91百万円と前年同期比で増収となりました。ブランドポートフォリオの拡充が業績全体を押し上げる主因となっています。

Oneコマースサービスも、これまで積み上げてきたECノウハウの活用に加え、ライブコマース単独の流通総額が100億円を突破したことが寄与し、売上高31億65百万円と前年同期比で増収となりました。一方、共創・自創バリューアップサービスは、独占販売権を持つ自然派コスメブランド「KohGenDo」が計画通り進捗した半面、スノーアパレルを主力とする連結子会社が競合や天候の影響で減収減益となり、売上高は14億22百万円にとどまりました。ECプラットフォームサービスは、ライブコマースアプリ「Peace you LIVE」の手数料収入増加により1億99百万円となっています。

費用面では、ソーシャルコマース領域における体制構築とサービス開発にかかる費用を戦略的な先行投資として継続した点が注目されます。「TikTok Shop」の3つ全ての公式パートナー認定を取得し、広告運用から店舗構築、フルフィルメント、ライブコマース支援までを一気通貫で提供できる体制を整備しました。この先行投資を吸収しながら大幅増益を達成した点に、既存事業の収益基盤の強さが表れていると見られます。


4. 通期実績が示す収益モデルの現在地

貸借対照表を見ると、資産合計は95億57百万円(前期末比+11.0%)に増加しました。主な要因は、現金及び預金が減少した一方、売掛金や商品在庫が増加したことにあります。負債合計は70億18百万円(前期末比+7億72百万円)で、未払金や短期借入金の増加が主因です。純資産は25億38百万円(前期末比+7.4%)に増加し、利益剰余金の積み増しが自己資本の充実につながりました。自己資本比率は26.4%となっています。

キャッシュ・フローの状況では、営業活動によるキャッシュ・フローが-15億54百万円となりました。未払金や棚卸資産、売上債権の増加が資金使用の主な要因ですが、前期と比べると使用額は縮小しています。投資活動によるキャッシュ・フローは-1億67百万円、財務活動によるキャッシュ・フローは-2億81百万円となり、これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は9億28百万円まで減少しました。

売上高に占める協業ブランドパートナーサービスの比率は約73%に達しており、同サービスが収益モデルの中核を担っている構図が鮮明です。営業利益率は依然として低水準にとどまるものの、増収に対して利益が大きく伸びたことは、先行投資フェーズを経て収益性改善の兆しが表れ始めていることを示していると考えられます。


5. 業界の注目ポイント

ポイント1:ソーシャルコマース領域への先行投資が競争優位の起点に
株式会社いつもは、TikTok Shopの3つ全ての公式パートナー認定を取得し、広告運用から店舗構築、フルフィルメント、ライブコマース支援までを一気通貫で提供できる体制を迅速に整備しました。クリエイター支援にも力を入れ、国内トップクラスのクリエイターとの連携体制を強化しています。当連結会計年度に投じた体制構築とサービス開発の費用は戦略的な先行投資と位置づけられており、今後の収益化フェーズでこの投資がどう回収されるかが注目されます。

ポイント2:iDM×AIによる業務効率化と高付加価値化
独自支援モデル「いつも.データマーケティング(iDM)」に生成AIを融合させた「iDM×AI」を戦略の中核に据え、バリューチェーンとマルチチャネルの分断を解消する「いつも.TX(Total Transformation)」の推進を掲げています。翌期はOneコマースサービスにおいてAIエージェントの実装により定型業務の自動化を進め、人的リソースを高付加価値な戦略コンサルティング領域へシフトする方針です。支援精度の向上と平均単価の引き上げを同時に実現できるかが、収益性改善の鍵を握ると見られます。

ポイント3:ブランドポートフォリオの横展開と子会社の構造改革
協業ブランドパートナーサービスでは、今期大幅増収を達成した主力ブランドの運営ノウハウを他ブランドへ横展開し、既存ブランドの成長加速と新規ブランドの早期収益化を目指しています。一方、共創・自創バリューアップサービスでは、減収減益となった子会社「ビーラン」の抜本的な構造改革を断行するとしており、グループ全体の収益基盤の安定化に向けた選別と集中が進むと考えられます。


6. ITトレンド編集部の考察

今回の決算から見えるのは、株式会社いつもが既存のコア事業で着実に収益を積み上げながら、ソーシャルコマースという新領域への先行投資を並行して進めているという二段構えの経営です。営業利益+262.3%という大幅な伸びは、協業ブランドパートナーサービスの新規ブランド伸長という既存事業の強さによるところが大きく、TikTok Shop関連の先行投資費用を吸収してなお増益を確保できた点は、収益基盤の底堅さを示していると見られます。

純利益が前期の赤字から黒字転換したことは、単なる一時的な回復ではなく、複数ブランドのローンチが軌道に乗り始めたことによる構造的な改善と捉えることができそうです。ただし、営業利益率は依然として低水準にあり、営業キャッシュ・フローもマイナスが続いています。運転資本の増加を吸収しながら利益率をどこまで引き上げられるかが、今後の焦点になると考えられます。

翌期予想では増収増益の継続が見込まれていますが、ソーシャルコマース領域への投資がいつ本格的な収益貢献に転じるか、また子会社「ビーラン」の構造改革がどの程度奏功するかが、計画達成の変数になりそうです。iDM×AIを軸にした業務効率化がどこまで平均単価の引き上げにつながるかも、中期的な収益性改善を占ううえで注目されるポイントです。


7. まとめ

  • 2026年3月期通期の売上高は178億78百万円(前期比+28.2%)と大幅増収
  • 営業利益2億69百万円(同+262.3%)、経常利益2億49百万円(同+474.8%)と大幅増益
  • 親会社株主に帰属する当期純利益は1億57百万円となり、前期98百万円の赤字から黒字転換
  • 協業ブランドパートナーサービスの新規ブランド伸長が業績を牽引、Oneコマースサービスもライブコマース流通総額100億円突破で増収
  • TikTok Shop対応など、ソーシャルコマース領域への戦略的先行投資を継続
  • 自己資本比率は26.4%、営業キャッシュ・フローは-15億54百万円
  • 翌2027年3月期は売上高205億60百万円(同+15.0%)、営業利益3億26百万円(同+21.0%)、純利益1億88百万円(同+19.6%)を予想。配当は無配方針を継続

ITトレンド編集部

IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

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