株式会社EMシステムズ(証券コード:4820)は、調剤薬局向けレセプトコンピュータを主力に、医療機関や介護・福祉事業者向けのシステムを提供する企業です。事業は調剤システム事業、医科システム事業、介護/福祉システム事業、その他の事業で構成されています。クラウド型サービス「MAPs」シリーズを軸に、医療DXの社会実装を支える製品群を展開しています。
2026年12月期中間期(2026年1月〜6月)の連結業績は、売上高104億34百万円(前年同期比-14.1%)となりました。営業利益は9億22百万円(同-55.7%)、経常利益は12億79百万円(同46.7%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は6億63百万円(同-58.6%)です。大幅な減収減益での折り返しとなりました。
減益の背景にあるのは、過年度に収益をけん引したオンライン資格確認システムや電子処方箋の導入が一巡したことです。加えて、既存顧客のリプレイス促進を抑え、新規顧客の獲得と付加価値商材へ営業リソースを振り向ける戦略転換の影響も出ています。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社EMシステムズ(証券コード:4820)徹底解説】2026年12月期第1四半期──特需反動で売上24.9%減・営業利益85.9%減、医療DX需要の次波取り込みが焦点
上半期の市場動向と後半への示唆
医療業界では「医療DX令和ビジョン2030」等に基づく医療DXの社会実装が加速しています。効率化や適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上が喫緊の課題となり、医療機関や薬局における経営基盤強化を目的としたシステム投資の重要性は一段と高まっています。
ただし、需要の中身は変質しました。オンライン資格確認システムや電子処方箋のように、制度対応に伴って一斉に発生する特需は導入が一巡すると急速に縮小します。同社の上半期の減収は、この構造がそのまま数字に表れたものと見られます。
後半に向けては、制度対応需要の次にどのような投資が生まれるかが焦点です。各種報酬改定への対応や、生成AIをはじめとする先端技術を活用した付加価値サービスが、その候補になります。特需に代わる継続的な収益源をどれだけ積み上げられるかが問われる局面です。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社EMシステムズ 2026年12月期 中間期(第2四半期)決算短信(PDF)
前年同期にあたる2025年12月期中間期の売上高は121億49百万円でした。今期は17億15百万円の減収となり、104億34百万円にとどまっています。減少率は14.1%です。
利益の落ち込みは売上以上でした。売上総利益は62億円から50億11百万円へ減少した一方、販売費及び一般管理費は41億19百万円から40億89百万円とほぼ横ばいでした。固定的な費用が残るなかで粗利が減ったため、営業利益は20億80百万円から9億22百万円へと55.7%減少しています。
経常利益は12億79百万円で、営業利益を上回りました。不動産賃貸収入5億58百万円を含む営業外収益5億92百万円が寄与しています。特別損失として減損損失1億87百万円を含む1億93百万円を計上し、親会社株主に帰属する中間純利益は6億63百万円となりました。
直近決算の重要ポイント
今回の中間決算で注目したいのは、減収の一部が意図的な選択によるものだという点です。同社は営業リソースを新規他社獲得および付加価値商材へ重点配分し、既存顧客のリプレイス促進を抑制しました。短期の売上を犠牲にして、将来の収益基盤拡大を優先した形といえます。
需要の剥落に対する打ち手も動いています。5月以降、調剤セグメントで全社横断の選抜メンバーによる専門活動体制を構築し、厚生行政関連オプションソフト等の導入設置獲得を進めました。会社側はこれにより需要剥落の影響を一定程度リカバリしたと説明しています。
財務面は堅調を維持しました。中間期末の総資産は267億76百万円で前期末から7億30百万円減少し、負債合計は67億79百万円へ2億94百万円減少しています。純資産は199億96百万円となり、自己資本比率は74.3%と前期末の73.9%から上昇しました。現金及び預金は65億83百万円で、前期末から12億63百万円減少しています。
中間期が示す事業の実力
主力の調剤システム事業は、売上高83億39百万円(前年同期比15.6%減)、営業利益12億76百万円(同39.9%減)となりました。前年度の集中需要が一巡したことに加え、既存顧客のリプレイス促進を抑制した影響が出ています。それでも二桁億円台の営業利益を確保しており、収益の柱である位置づけは変わっていません。
医科システム事業は売上高12億25百万円(前年同期比18.2%減)、営業損失2億54百万円(前年同期は営業利益80百万円)と赤字に転じました。電子処方箋の集中需要が一巡したことが響いています。一方で、組織体制の再構築とデジタルマーケティングを活用した戦略的アプローチにより、「MAPs for CLINIC」の課金お客様数は着実に増加し、課金売上高は順調に推移しています。
介護/福祉システム事業は売上高4億11百万円(前年同期比56.6%増)と伸び、営業損失も1億30百万円(前年同期は営業損失1億69百万円)へ縮小しました。「MAPs for NURSING CARE」へのリプレイス促進に加え、株式会社コンダクトの連結対象化が寄与しています。その他の事業は売上高5億38百万円(同5.8%減)、営業利益11百万円(同51.1%減)でした。
業界の注目ポイント
制度対応特需の後をどう埋めるか
オンライン資格確認や電子処方箋のような制度対応需要は、医療ITベンダーにとって大きな収益機会でした。同時に、導入完了後は反動減が避けられない性質も併せ持ちます。同社の今期の減収は、その典型的なパターンといえます。
反動を和らげる手段は、月額課金型サービスの積み上げです。同社の医科システム事業では、売上高が減少する一方で課金お客様数と課金売上高が増加しています。初期売上に依存する構造から、継続課金を軸とした構造へ移行できるかが中期の安定性を左右すると考えられます。
薬局・診療所の業務効率化に生成AIが入り込む
同社はコールセンターへのAIツール導入や、オンラインを活用した効率的なシステム操作講習、社内業務へのAI活用を進めています。これらはサービス品質の向上と業務効率化による収益構造の強化を狙った取り組みです。人手が限られる医療現場向けサービスでは、支援側の効率化も収益性に直結します。
さらに、生成AIをはじめとする先端技術を活用した新たな付加価値サービスの開発・提供も掲げられています。制度対応という受け身の需要ではなく、経営改善に資する提案型の商材をどこまで育てられるかが問われます。この領域の成否が次の成長局面を決めると見られます。
介護・福祉領域はM&Aを含めた再編が進む
介護/福祉システム事業の増収には、株式会社コンダクトの連結対象化が寄与しました。のれんが23億35百万円へ2億72百万円増加している点からも、外部リソースの取り込みが進んでいることが読み取れます。分散した事業者が多い介護領域では、顧客基盤の獲得手段としてM&Aが有効に働きます。
あわせて、収益構造の適正化に伴う価格体系の見直しによって課金売上高が増加しました。チェーン法人での案件受注も進んでいます。赤字幅の縮小が続けば、調剤・医科に次ぐ 第三の柱になる可能性があると考えられます。
ITトレンド編集部の考察
数字だけを見れば厳しい中間決算ですが、内容は前向きに読める部分もあります。減収の一因が、既存顧客のリプレイス促進を抑えて新規獲得へ資源を振り向けた戦略転換にあるためです。短期の売上を落としてでも顧客基盤を広げる判断は、特需後の成長を見据えたものと考えられます。
とはいえ、通期予想の達成には相応の巻き返しが必要です。通期予想は売上高227億62百万円(前期比-3.8%)、営業利益33億16百万円、経常利益39億39百万円、当期純利益21億93百万円で据え置かれました。中間期の営業利益9億22百万円は通期予想に対して約28%の進捗であり、下期に大きく積み増す計画になっています。
注目すべきは、月額課金型の収益がどこまで育つかです。医科システム事業の課金売上高は増加しており、介護/福祉システム事業でも価格体系の見直しで課金売上が伸びています。自己資本比率74.3%という厚い財務基盤を背景に、特需依存からストック型への転換を進められるかが中期の焦点になると考えられます。
まとめ
- 2026年12月期中間期の売上高は104億34百万円(前年同期比-14.1%)
- 営業利益は9億22百万円(同-55.7%)、経常利益は12億79百万円(同46.7%減)
- 親会社株主に帰属する中間純利益は6億63百万円(同-58.6%)、減損損失1億87百万円を計上
- 調剤システム事業は売上高83億39百万円(同15.6%減)、営業利益12億76百万円(同39.9%減)
- 医科システム事業は売上高12億25百万円(同18.2%減)、営業損失2億54百万円と赤字転落
- 介護/福祉システム事業は売上高4億11百万円(同56.6%増)、営業損失は1億30百万円へ縮小
- その他の事業は売上高5億38百万円(同5.8%減)、営業利益11百万円(同51.1%減)
- 総資産267億76百万円、純資産199億96百万円、自己資本比率74.3%
- 2026年12月期通期予想は売上高227億62百万円(前期比-3.8%)、営業利益33億16百万円、経常利益39億39百万円、当期純利益21億93百万円
- 予想年間配当は1株あたり23.0円
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

