企業の「健康経営」や「人的資本経営」への関心が高まる中、従業員の健康管理や医療費の適正化を支援するサービスの需要が拡大しています。株式会社バリューHRは、健康保険組合や企業向けに健康管理プラットフォームとBPO(業務アウトソーシング)を提供する企業です。
2025年12月期は売上高100億68百万円(前年比20.2%増)と大きく伸びました。一方で営業利益は8億83百万円(前年比21.0%減)となりました。これは顧客増加を見据えた人員採用やシステム投資などの先行投資によるものと説明されています。
本記事では、健康管理サービス市場の背景、同社の事業構造、決算のポイントを整理しながら、「企業の健康管理業務とITシステムの関係」を中心に解説します。
市場背景と業界構造
バリューHRが属するのは、企業の健康管理・医療費適正化を支援する「ヘルスケアBPO・健康管理システム」の領域です。
市場背景として、資料では次の社会変化が挙げられています。
まず「人生100年時代」の到来や超高齢化社会の進行です。高齢化が進む中で医療費は増加しており、健康保険組合の財政負担は大きくなっています。そのため、重症化予防や医療費の適正化が重要なテーマとなっています。
さらに制度対応やデータ活用の高度化によって、健康管理関連業務は年々複雑化しています。
例えば企業や健康保険組合では次のような業務が発生します。
- 健康診断の管理
- 特定保健指導の実施
- 医療費データの分析
- 健康施策の運用
これらの業務は事務処理量が多く、制度対応も頻繁に発生するため、企業や保険組合の限られた人員では対応が難しいケースがあります。
その結果、システム導入と業務アウトソーシング(BPO)を組み合わせたサービスの需要が拡大しています。
また、少子高齢化による労働人口の減少により、「健康経営」や「人的資本経営」に対する企業の関心が高まっていることも市場拡大の背景となっています。
この領域では、IT化・データ化が特に影響するのは次の業務と考えます。
- 健康診断データの管理
- 医療データ分析
- 健康施策の運用管理
- 健診予約・結果管理
バリューHRは、こうした業務を自社プラットフォームとBPOで提供する企業です。つまりデジタル化の影響を受ける側というより、企業の健康管理DXを推進する側の企業といえます。
過去数年の業績推移
バリューHRの売上はここ数年で大きく拡大しています。
2024年12月期の売上高は83億76百万円(前年比18.0%増)でした。続く2025年12月期は100億68百万円(前年比20.2%増)となり、二年連続で高い成長率を維持しています。
一方で利益は減少しています。
営業利益は2024年12月期の11億17百万円から、2025年12月期は8億83百万円となり、売上高営業利益率も13.3%から8.8%へ低下しました。
経常利益は11億81百万円から9億57百万円へ減少し、純利益も7億91百万円から6億29百万円へ減少しています。
この減益の背景として、資料では次の要因が挙げられています。
- 顧客増加に対応するための先行投資
- 想定以上の顧客増に伴う派遣・業務委託費の増加
- 内製体制構築のための採用による労務費増加
- システム改修による設備投資費の増加
つまり、売上は拡大しているものの、将来の成長を見据えた投資によって利益が圧迫されている「投資フェーズ」の状態と整理できます。
なお、2026年12月期の会社予想では営業利益は16億50百万円(前年比86.9%増)と大幅な回復を見込んでいます。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で会社側が強調しているポイントは、顧客基盤の拡大です。
新規顧客の開拓は、Webセミナーの継続開催や協業先との連携によって進められています。また既存顧客に対しては、健康管理サービスの追加受注が拡大しています。
さらに2025年には約250名の採用を実施し、内製化基盤の整備を進めました。
この人材投資は短期的にはコスト増になりますが、将来的なサービス提供体制の強化を目的としたものです。
IT投資としては、業務処理システムの改修開発による設備投資が増加しています。また提携する健診機関とのデジタル連携を強化する方針も示されています。
企業の健康管理業務は多くの医療機関と関係するため、データ連携の仕組みが重要になります。
事業構造と収益モデル
バリューHRの事業は主に2つのセグメントで構成されています。
1つ目は「バリューカフェテリア事業」です。2025年12月期の売上高は82億57百万円で、全体の約82%を占めています。
この事業では、自社開発の健康管理プラットフォーム「バリューカフェテリア®システム」を中心に、次のサービスを提供しています。
- 健診予約
- 健診結果管理
- 特定保健指導
- 健康管理BPO
もう1つは「HRマネジメント事業」で、売上高は18億10百万円です。この事業では健康保険組合の設立支援などのコンサルティングやBPOサービスを提供しています。
収益は主に次のようなサービスから生まれます。
- システム利用料
- 健診事務代行
- 保健指導サービス
つまり、ITシステムと業務アウトソーシングを組み合わせたサービスモデルです。
IT視点では、企業の健康管理業務という「バックオフィス業務」をデジタル化するサービスと言えます。
業界の注目ポイント
ポイント1:健康経営の広がり
企業の人的資本開示や健康経営への関心が高まる中、健康管理データの活用が重要になっています。この分野はIT導入によって改善可能な領域です。
ポイント2:健康保険組合の業務負担
医療費管理や制度対応などの事務処理は複雑化しています。BPOサービスはこの負担を軽減する手段となります。
ポイント3:医療データのデジタル化
健康診断や医療データをデジタル管理することで、分析や施策立案が可能になります。ここはIT導入の中心領域です。
ITトレンド編集部の考察
バリューHRは、IT企業というより「健康管理業務のデジタル化企業」と整理するのが実態に近いといえます。
同社の特徴は
- 自社プラットフォーム
- BPOサービス
- 健康データ管理
を組み合わせたサービスモデルです。
企業担当者の視点では、このようなサービスは次のような場面で検討対象になります。
- 健康診断管理を効率化したい
- 健康経営のデータ管理を行いたい
- 健康保険組合業務をアウトソースしたい
健康管理業務は制度対応や医療データの扱いなど専門性が高く、ITシステムだけでは運用が難しい領域です。そのため、システムとBPOを組み合わせたサービスは導入しやすい形態といえます。
まとめ
バリューHRを一言で表すなら、「企業の健康管理DXを支援するBPO企業」です。
2025年12月期は
- 売上:100億円(+20.2%)
- 営業利益:8.8億円(△21.0%)
と増収減益でしたが、これは人材採用やシステム投資などの先行投資によるものです。
IT・業務視点で整理すると、
- 健康管理業務のデジタル化
- 医療データの管理・分析
- BPOによる業務効率化
という領域が中心になります。
企業の健康経営や人的資本経営が重視される中で、健康管理データを活用した業務のデジタル化は今後も重要なテーマになると考えられます。

