デジタルアーツ株式会社は、Webフィルタリング「i-FILTER」、メールセキュリティ「m-FILTER」、ファイル暗号化・遠隔削除ソリューションなどを企画・開発・販売するセキュリティ専業企業です。連結子会社3社とともに、企業・公共機関・教育機関のICT利用を支える領域で事業を展開しています。2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、契約高34億98百万円(前年同期比+51.7%)、売上高27億11百万円(同+19.4%)、営業利益10億35百万円(同+30.2%)、経常利益10億60百万円(同+31.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益7億18百万円(同+29.2%)と、大幅な増収増益となりました。
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デジタルアーツ株式会社(証券コード:2326)の決算解説
本記事では、今期スタートを取り巻く市場環境、業績の推移、契約高の急伸を牽引した製品動向、そして通期予想達成に向けた課題を整理します。
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
当第1四半期(2026年4月〜6月)のセキュリティ業界では、フィッシング詐欺や経営者・取引先等を騙る偽装メール、認証情報の窃取を起点とする不正アクセスなど、攻撃手法の巧妙化・多様化が続きました。クラウドサービスや生成AIの業務利用が拡大する中、社外や各拠点で利用する端末の保護、未承認のクラウドサービス・生成AIサービスの利用管理、企業グループ全体のセキュリティガバナンス強化が重要な課題となっています。
企業向け市場では、フィッシングや不正アクセス対策に加え、未承認のクラウドサービスや生成AIサービスの利用管理需要が拡大しています。公共向け市場でも、「GIGAスクール構想 第2期」案件をはじめとした教育現場のセキュリティニーズが引き続き旺盛であり、行政機関向けにも「第3次自治体セキュリティ強靭化」に伴う需要が拡大しました。
デジタルアーツは、中期経営計画(2025年3月期〜2027年3月期)の最終年度として、「セキュリティ事業の成長」「公共市場シェア拡大」「ハイタッチセールスを支える営業・開発体制の強化」の3領域を重点テーマに掲げ、こうした市場環境の変化に対応する体制を強化しています。
2. 業績推移
当第1四半期連結累計期間の契約高は34億98百万円(前年同期比+51.7%)、売上高は27億11百万円(同+19.4%)となりました。クラウドサービス系製品の契約が伸びた案件が多く、売上高は契約期間にわたって按分計上されるため、契約高の伸びに比べて売上高の伸びは緩やかになっています。
利益面では、営業利益10億35百万円(前年同期比+30.2%)、経常利益10億60百万円(同+31.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益7億18百万円(同+29.2%)と、いずれも大幅な増益を確保しました。クラウドサービス系製品の利用者数増加に伴う通信費や新製品リリースに伴うソフトウェア償却費の増加はあったものの、前期に発生した創立30周年関連費用の減少等により販管費が前年同期を下回ったことが増益を後押ししています。
通期の業績予想は、売上高120億円(前年比+10.8%)、営業利益54億円(同+12.7%)、経常利益55億5百万円(同+13.7%)、純利益37億70百万円(同+10.0%)としており、2026年5月7日公表の見通しから変更はありません。第1四半期の業績は順調に推移していると会社側は説明しています。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も注目すべきは、契約高が前年同期比+51.7%という高い伸びを示した点です。企業向け市場では、統合セキュリティ管理ニーズを取り込んだ新製品「Z-FILTER」の契約獲得が進展し、公共向け市場では「GIGAスクール構想 第2期」案件の受注単価上昇が契約高を押し上げました。約400件の顧客接点を創出し、その約3割が新規案件化するなど、ハイタッチ営業の成果も表れています。
市場別に見ると、企業向け市場の契約高は12億6百万円(前年同期比+15.5%)、売上高は13億18百万円(同+12.7%)となりました。公共向け市場は契約高21億95百万円(同+89.2%)、売上高12億96百万円(同+29.8%)と大きく伸長し、全社の契約高成長をけん引しています。一方、家庭向け市場は契約高・売上高ともに96百万円で、前年同期をそれぞれ5.1%、5.4%下回りました。
財政状態については、資産合計が291億75百万円(前連結会計年度末比+13億10百万円)となり、現金及び預金が8億67百万円増加したことが主因です。負債合計は109億75百万円(同+15億64百万円)で、前受金が19億18百万円増加しており、クラウドサービス系製品の契約が積み上がっていることを示しています。
4. 今期の重点領域と収益構造
デジタルアーツの収益構造は、企業向け市場・公共向け市場・家庭向け市場の3市場で構成され、Webフィルタリング「i-FILTER」、メールセキュリティ「m-FILTER」、新製品「Z-FILTER」が主力製品です。オンプレミス製品は出荷時に契約額の大部分を売上計上する一方、クラウドサービス系製品はサービス提供期間にわたり按分計上するため、契約高の伸びが将来の売上高・ストック収益の先行指標となる点が特徴です。
今期は、生成AIの安全な業務活用に向けて、「i-FILTER」及び「Z-FILTER」を中核に、生成AIへの入力内容・出力内容・利用状況を統合的に制御・可視化する取り組みを推進しています。企業のクラウドサービス・生成AI利用管理という新たな需要領域の開拓が、中期的な成長ドライバーとして位置づけられています。
公共向け市場では、「GIGAスクール構想」で築いた顧客基盤を活用し、「次世代校務DX」を含む教育分野での案件獲得にも取り組んでいます。省庁向け案件の獲得や「第3次自治体セキュリティ強靭化」への対応強化など、行政分野への浸透も進めており、公共市場シェア拡大という中期経営計画の重点テーマに沿った展開が続いています。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:クラウドサービス系製品への移行が進む契約構造
契約高が売上高を大きく上回るペースで伸びているのは、クラウドサービス系製品の契約が期間按分で売上計上されるためです。この契約残高の積み上がりは将来のストック収益基盤の拡大を意味しており、中期的な業績の安定性を高める要素として注目されます。
ポイント2:公共向け市場における受注単価の上昇
「GIGAスクール構想 第2期」案件では、第1期と比較して受注単価が上昇しており、教育市場における同社の競争優位性が価格面にも表れています。競争環境が激化する中でも高い受注シェアを維持できている点は評価できるポイントです。
ポイント3:生成AI活用に伴う新たなセキュリティ需要
未承認のクラウドサービスや生成AIサービスの利用管理という新しい需要領域が拡大しており、「i-FILTER」「Z-FILTER」を軸としたソリューション需要の取り込みが進んでいます。生成AIの企業利用が広がるほど、この分野の市場規模も拡大していくと見られます。
6. ITトレンド編集部の考察
2027年3月期第1四半期を一言で表すと「契約高の急伸がクラウドサービス系製品への移行を印象づけた四半期」です。契約高+51.7%に対し売上高+19.4%という差は、クラウドサービス系製品の収益認識ルールによるものですが、この差自体が将来の売上成長の先行指標として前向きに評価できます。
特に公共向け市場の契約高が+89.2%と大きく伸びている点は注目に値します。「GIGAスクール構想 第2期」での高い受注シェア維持に加え、行政機関向け案件の獲得も進んでおり、公共市場シェア拡大という中期経営計画の重点テーマが着実に成果として表れていると見られます。
今後は、積み上がった契約残高がどのペースで売上高に転化していくか、また生成AI関連の新たなセキュリティ需要をどこまで取り込めるかが、通期予想(営業利益54億円、前年比+12.7%)達成、さらにはその先の成長ペースを左右する焦点になるとみられます。
7. まとめ
デジタルアーツ株式会社を一言で表すと、「契約高の急伸でクラウドサービス系製品への移行が進み、公共・企業両市場で成長を続けるセキュリティ専業企業」です。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の業績は以下のとおりでした。
- 契約高 34億98百万円(前年同期比+51.7%)
- 売上高 27億11百万円(同+19.4%)
- 営業利益 10億35百万円(同+30.2%)
- 経常利益 10億60百万円(同+31.5%)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 7億18百万円(同+29.2%)
公共向け市場の契約高は21億95百万円(前年同期比+89.2%)と大きく伸長し、全社の契約高成長をけん引しました。
通期(2027年3月期)の業績予想は、売上高120億円(前年比+10.8%)、営業利益54億円(同+12.7%)、経常利益55億5百万円(同+13.7%)、純利益37億70百万円(同+10.0%)で据え置かれています。契約残高の売上転化ペースと生成AI関連需要の取り込みが、今後の成長を左右しそうです。
ITトレンド編集部
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