株式会社ファンコミュニケーションズは、成果報酬型広告(アフィリエイト広告)サービス「A8.net」を主力とするデジタルマーケティング企業です。広告主とメディア運営者をつなぐネットワークを軸に、近年はファンマーケティングやインフルエンサーマーケティングなどの新領域にも事業を広げています。
2026年12月期中間期(第2四半期累計)の連結業績は、売上高34億34百万円(前年同期比-5.8%)、営業利益4億89百万円(同-54.0%)となりました。経常利益は4億59百万円(同-56.1%)、親会社株主に帰属する中間純利益は1億98百万円(同-71.3%)です。
同社は同時に通期業績予想の修正と、中期経営計画の取り下げを公表しました。事業環境の構造変化を受けた判断と見られます。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社ファンコミュニケーションズ(証券コード:2461)徹底解説】2026年12月期 第1四半期──生成AI検索の普及で主力事業に逆風、戦略事業は増収続く
上半期の市場動向と後半への示唆
当中間期のわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費の持ち直しなど、緩やかな回復基調で推移しました。3月以降は中東情勢に伴う資源価格上昇などがリスク要因として意識されました。一方、日銀短観(6月調査)では業況判断DIが大企業の製造業・非製造業いずれも高水準で推移するなど、企業の業績に対する見方は総じて前向きでした。
同社グループが事業を展開するデジタルマーケティング領域では、成果報酬型広告であるアフィリエイト広告や、SNSで影響力を持つ個人を活用するインフルエンサーマーケティングが、費用対効果の高さやターゲット顧客への訴求力の観点から引き続き重要な手法として活用されています。
その一方で、大きな環境変化が進んでいます。生成AIを活用した検索機能の普及により、情報収集型の検索においてユーザーがWebサイトへのクリックなしに回答を得るケースが増加しました。アフィリエイトメディアを含む、検索流入に依存するパートナーサイトへの自然流入は減少傾向にあります。
同社はこの動きについて、幅広い年齢層に及ぶ構造的な変化であり、デジタルマーケティング市場全体にとって大きな転換点になっていると説明しています。広告主・メディア双方において、AIに引用・推薦されるコンテンツ設計への対応の重要性が急速に高まっており、下半期以降もこの適応が業界共通の課題になると考えられます。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社ファンコミュニケーションズ 2026年12月期 中間期(第2四半期)決算短信(PDF)
2026年12月期中間期の売上高は34億34百万円で、前年同期比-5.8%の減収となりました。利益面では営業利益4億89百万円(同-54.0%)、経常利益4億59百万円(同-56.1%)と、減収率を大きく上回る幅で利益が落ち込んでいます。
親会社株主に帰属する中間純利益は1億98百万円(同-71.3%)となりました。1株当たり中間純利益(EPS)は3.01円です。売上原価が前年同期の3億85百万円から7億54百万円へ増加したことが、利益率低下の一因となっています。
財務面では、中間期末の総資産が212億35百万円と前連結会計年度末に比べ16億91百万円減少しました。投資有価証券が9億49百万円増加した一方、現金及び預金が25億69百万円減少したことが主な要因です。純資産は162億66百万円で13億13百万円の減少となり、配当金の支払い12億59百万円が影響しています。
2026年12月期通期の業績予想は修正され、売上高73億30百万円(前期比+3.3%)、営業利益12億01百万円(同-38.9%)、経常利益11億81百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6億87百万円(同-47.5%)となりました。年間配当予想は21.0円とされています。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も重要なのは、減益の要因が一時的なものではなく構造的な変化に根ざしている点です。主力のCPAソリューション事業では、稼働広告主数の減少、コミッション率の低下、特定の主要広告主における出稿予算の減少が重なりました。なかでも特定広告主の予算減少による影響が最も大きかったと説明されています。
加えて、生成AI検索の普及に伴う、検索流入に依存するメディアのコンバージョン数の減少も、構造的な押し下げ要因として挙げられています。検索から流入したユーザーが商品購入や申し込みに至る導線そのものが細くなっているため、広告主・メディアの双方に影響が及ぶ形です。
もう一つの注目点は、中期経営計画の取り下げです。同社は2025年2月に発表した2025年度から2027年度までの計画に基づき、顧客ネットワークの拡大や営業利益の成長、ROE向上に取り組んできました。各セグメントの業績動向と事業環境の見通しを踏まえ、計画そのものを取り下げる判断に至っています。
中間期が示す事業の実力
同社の事業は、CPAソリューション事業と戦略事業の2つに分かれています。CPAソリューション事業は主力サービスであるアフィリエイト広告「A8.net」やスマートフォンアプリ向けCPI広告「A8app」などを提供しており、当中間期の売上高は24億80百万円(前年同期比-17.0%)、セグメント利益は16億13百万円(同-19.8%)となりました。
A8.netの規模を示す指標を見ると、中間期末の稼働広告主ID数は2,965で、前連結会計年度末の3,084から減少しました。一方、登録パートナーサイト数は3,686,996と、前連結会計年度末の3,622,301から増加しています。メディア側の基盤は維持されているものの、広告主側の出稿が細っている状況がうかがえます。
戦略事業は「ファンマーケティング」「インフルエンサーマーケティング」「LINEマーケティング」「ゲームパブリッシング事業」を中心に、新規事業の企画・開発投資を拡大してきました。当中間期の売上高は9億53百万円(前年同期比+45.1%)と大きく伸びた一方、セグメント損失は4億72百万円となり、前年同期の損失3億30百万円から拡大しています。
ファンマーケティング領域ではストック型収益が四半期ベースで過去最高を更新し、収益基盤の積み上げが進みました。インフルエンサーマーケティング領域では大型案件の獲得により取扱高が伸長しており、下期にかけて収益性の改善を見込んでいます。なお、当中間期に株式会社レイリーを新たに連結子会社としており、戦略事業においてのれん1億23百万円が発生しています。
業界の注目ポイント
生成AI検索がもたらす送客構造の変化
生成AIを活用した検索機能の普及により、ユーザーが検索結果ページ上で回答を得て、外部サイトを訪れないケースが増えています。この変化は、検索流入を前提としてきたメディアの収益モデルに直接影響します。
同社は、過去にも若年層のSNSシフトによる検索行動の変化はあったものの、今般の生成AI普及に伴う検索離れは幅広い年齢層に及ぶ構造的な変化だと位置付けています。広告主・メディア双方において、AIに引用・推薦されるコンテンツ設計への対応の重要性が急速に高まっており、対応の巧拙が今後の成果を分ける可能性があると考えられます。
成果報酬型広告の位置付けの再確認
成果報酬型広告は、商品購入や資料請求といった成果が発生した時点で費用が生じる仕組みです。広告主にとって費用対効果を把握しやすく、予算配分の判断がしやすい点が評価されてきました。
ただし、成果の起点となる送客が減れば、そのまま取扱高の減少につながります。今回の決算では、稼働広告主数の減少とコミッション率の低下が同時に進みました。手法としての有効性は保たれている一方で、流入経路の多様化をどこまで進められるかが業界共通の課題になっていると見られます。
新領域への投資と収益化のタイミング
デジタルマーケティング各社は、検索依存からの脱却を目指してSNSや動画、コミュニティなど複数の接点に投資を広げています。ファンマーケティングやインフルエンサーマーケティングは、その代表的な領域です。
同社の戦略事業は売上高が前年同期比+45.1%と伸びる一方で、損失が拡大しました。投資先行の段階にある事業では、規模の拡大と損失の拡大が並行して進むことは珍しくありません。ストック型収益の積み上がりが損失を吸収する水準に達するまでにどれだけの期間を要するかが、注目点になりそうです。
ITトレンド編集部の考察
上半期の決算は、売上高の減少幅(前年同期比-5.8%)に比べて利益の落ち込み(営業利益-54.0%)が際立つ内容でした。主力のCPAソリューション事業が高い利益率を持つ一方、戦略事業が投資段階にあるため、収益構成の変化がそのまま利益率に表れた形と考えられます。
中期経営計画の取り下げは、外部環境の変化の大きさを会社自身が認めた判断といえます。生成AI検索の普及は同社固有の問題ではなく、検索流入を前提とする事業者全体に及ぶ変化です。この前提が変わった以上、計画を維持したまま走るより、いったん組み直す方が合理的と見ることもできます。
着目したいのは、戦略事業のストック型収益が四半期ベースで過去最高を更新している点です。成果報酬という変動性の高い収益から、継続課金型の収益へ比重を移せるかどうかが、次の局面を左右すると考えられます。下半期はインフルエンサーマーケティングの収益性改善と、LINEマーケティング領域のビジネスモデル転換の進捗が焦点になりそうです。
まとめ
- 2026年12月期中間期の売上高は34億34百万円(前年同期比-5.8%)と減収
- 営業利益4億89百万円(同-54.0%)、経常利益4億59百万円(同-56.1%)と大幅減益
- 親会社株主に帰属する中間純利益は1億98百万円(同-71.3%)、EPSは3.01円
- CPAソリューション事業は売上高24億80百万円(同-17.0%)、戦略事業は売上高9億53百万円(同+45.1%)で損失4億72百万円
- 通期予想を修正し、売上高73億30百万円(前期比+3.3%)、営業利益12億01百万円(同-38.9%)、当期純利益6億87百万円(同-47.5%)、年間配当予想21.0円。あわせて中期経営計画を取り下げ
ITトレンド編集部
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