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決算個社IT・インターネット2026年09月25日

【株式会社アシロ(証券コード:7378)徹底解説】2026年10月期 第3四半期──Q3単独で減益幅縮小、アライアンス事業が牽引

【株式会社アシロ(証券コード:7378)徹底解説】2026年10月期 第3四半期──Q3単独で減益幅縮小、アライアンス事業が牽引

株式会社アシロは、弁護士ポータルサイト「ベンナビ」シリーズを中核とするリーガル領域のインターネットメディア企業です。あわせて、転職メディア「キャリズム」などを運営するリーガルアライアンス事業も手がけています。弁護士費用保険や「LegalBase」を提供するリーガルプロテクト事業と、士業人材を紹介するHR事業も展開しています。国際会計基準(IFRS)を採用し、今期から報告セグメントを4区分に再編しました。

2026年10月期 第3四半期累計の業績は、売上収益53億12百万円(前年同期比+5.3%)と増収になりました。営業利益は9億64百万円(同-18.3%)、税引前四半期利益は9億61百万円(同-18.2%)です。親会社の所有者に帰属する四半期利益は6億35百万円(同-22.1%)となり、減益が続く一方で第3四半期単独の減益幅は縮小しました。

詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社アシロ(証券コード:7378)徹底解説】2026年10月期 第2四半期(中間期)──売上高6.5%増・成長投資で営業利益23%減

通期着地を左右する市場環境

当第3四半期累計(2025年11月〜2026年7月)の国内経済は、雇用・所得環境の改善や個人消費の持ち直しを背景に、緩やかな回復基調でした。一方で、物価上昇や株価・為替の変動など、先行きの不透明感も続いています。広告主の出稿姿勢は、こうした景況感の影響を受けやすい面があります。

同社が事業基盤とするインターネット広告市場は、拡大が続いています。電通の「2025年日本の広告費」によると、2025年のインターネット広告費は4兆459億円(前年比10.8%増)でした。市場全体の成長は、メディア運営企業にとって引き続き追い風です。

通期の着地を左右するのは、企業の採用意欲と弁護士事務所の広告需要の動向です。転職領域では企業の採用意欲の高まりが続き、同社の転職メディアの案件獲得を支えています。一方、弁護士広告の領域では前期に伸びた高単価商品の反動が出ており、需要の中身が変化していると見られます。

業績推移

2026年10月期の累計売上収益は、第1四半期16億72百万円、中間期35億61百万円、第3四半期53億12百万円と推移しました。第3四半期単独の売上収益は17億51百万円で、前年同期の17億02百万円から約3%増えています。累計の増収率は、中間期の+6.5%から+5.3%へやや鈍化しました。

利益面では、累計の営業利益が9億64百万円(前年同期比-18.3%)、税引前四半期利益が9億61百万円(同-18.2%)でした。親会社の所有者に帰属する四半期利益は6億35百万円(同-22.1%)です。第3四半期単独の営業利益は3億12百万円で、前年同期の3億28百万円に比べ約5%の減少にとどまりました。

通期予想は売上収益70億円、営業利益15億円、税引前利益14億50百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益9億80百万円で、期初から変更はありません。第3四半期時点の進捗率は、売上収益75.9%、営業利益64.3%、当期利益64.8%です。利益の進捗は第3四半期の目安である75%を下回っています。

財政状態は、資産合計42億29百万円、資本合計28億36百万円、親会社所有者帰属持分比率66.5%です。現金及び現金同等物は17億58百万円と、前期末から7億7百万円減少しました。自己株式の取得5億円と配当金の支払4億64百万円により、財務活動によるキャッシュ・フローが10億86百万円の流出となったためです。

直近決算の重要ポイント

今回の決算で最も注目すべき点は、事業の主役が入れ替わりつつあることです。リーガルアライアンス事業の累計売上収益は25億13百万円(前年同期比+29.9%)でした。リーガルメディア事業の24億68百万円(同-12.5%)を上回り、売上規模で最大のセグメントになりました。

リーガルメディア事業では、前期に拡大した高単価商品の売上収益が減少しました。セグメント利益は10億28百万円(同-12.3%)です。同社は主力の弁護士広告掲載サービスの収益性を強化し、高単価商品の減少による影響の緩和に取り組んでいます。

変化が見えたのは、第3四半期単独のリーガルアライアンス事業の利益です。累計のセグメント利益は4億37百万円(同+5.8%)と、広告媒体費の増加で売上の伸びを下回りました。しかし第3四半期単独では1億80百万円と、前年同期の1億1百万円から大きく伸びています。

リーガルプロテクト事業は、「LegalBase」などの新サービス立ち上げ費用により、累計で1億35百万円のセグメント損失となりました(前年同期は1億円の損失)。全社費用などの調整額も4億19百万円と、前年同期の3億55百万円から増えています。これらが、全社の減益の主な要因です。

Q3時点の事業進捗

リーガルメディア事業では、「ベンナビ」シリーズを軸に、新規顧客の開拓、1顧客当たりの収益向上、解約率の低下に取り組みました。第3四半期単独の売上収益は7億98百万円と、前年同期の10億4百万円を下回っています。高単価商品の反動は、第3四半期に入っても続いていると見られます。

リーガルアライアンス事業では、転職メディア「キャリズム」を中心に案件獲得が堅調でした。広告運用による集客拡大で、第3四半期単独の売上収益は8億54百万円と、前年同期の6億27百万円から伸びています。同社は今後、広告投資の効率性を管理しながら収益性の向上を図る方針です。

リーガルプロテクト事業では、弁護士費用保険「bonobo(ボノボ)」の販売チャネル拡充や認知度向上に取り組みました。法人・個人事業主向けの「LegalBase」をはじめ、新サービスの提供開始と販売体制の構築も進めています。累計の売上収益は58百万円(同+11.2%)と、まだ立ち上げ段階です。

HR事業の累計売上収益は2億71百万円(同+13.8%)、セグメント利益は53百万円(同+6.2%)でした。登録から成約までのファネル安定化と、職種別のマッチング精度向上を進めています。将来の業容拡大に向けて、求職者の登録者数を増やす広告宣伝も強化しました。

業界の注目ポイント

運用型広告で伸びる転職メディアと媒体費の管理

転職メディアの多くは、検索広告やSNS広告などの運用型広告で求職者を集め、求人企業からの成果報酬で収益を得ています。企業の採用意欲が高い局面では、広告費を投じるほど案件が増えやすく、売上を伸ばしやすい構造です。一方で、集客を広告に頼るほど、売上に連動して媒体費も増えていきます。

そのため、この事業モデルでは売上の伸びと利益の伸びが一致しにくくなります。広告単価の上昇や採用市場の変化があれば、利益率は短期間で変動します。獲得単価をどこまで管理できるかが、転職メディアの収益性を左右する最大の要素と考えられます。

弁護士広告で重みを増す継続率と顧客単価

弁護士ポータルサイトの収益は、法律事務所からの広告掲載料が中心です。弁護士の数が増え、事務所間の集客競争が続くなかで、ポータルサイトは重要な顧客獲得経路になっています。ただし、特定の分野や商品に需要が集中すると、その反動で売上が大きく振れることもあります。

安定した収益を保つには、単発の高単価商品に頼るより、掲載を続ける事務所を増やすことが重要です。解約率の低下と1顧客当たりの収益向上は、広告掲載型のメディアに共通する基本的な指標です。継続利用を前提とした収益基盤を厚くできるかが、業界での競争力の差になると見られます。

成長投資と株主還元を両立させる資本政策

メディア運営企業は大きな設備投資を必要としないため、稼いだ資金を新規事業と株主還元に振り向けやすい特徴があります。一方で、新規事業の立ち上げ期には利益が一時的に落ち込み、株主からの評価が揺らぎやすくなります。成長投資と還元のバランスをどう示すかは、多くのネット企業に共通する課題です。

同社は今期、自己株式の取得と消却を行い、年間配当予想も65円としています。新サービスへの先行投資で減益となる局面でも、還元を通じて資本効率を意識する姿勢を示した形です。こうした資本政策は、投資の成果が出るまでの期間を株主と共有する手段として広がっていると考えられます。

ITトレンド編集部の考察

今回の第3四半期決算は、減益基調のなかにも改善の兆しが見えた内容です。中間期の営業利益は前年同期比-23.4%でしたが、第3四半期単独では約5%の減少にとどまりました。リーガルアライアンス事業の利益が第3四半期単独で大きく伸び、広告投資の効率が改善してきたと見られます。

注目したいのは、リーガルアライアンス事業が売上規模でリーガルメディア事業を上回った点です。弁護士ポータルを中核とする事業構造から、複数のメディアで収益を分散させる構造へと移りつつあります。ただし利益の柱は依然としてリーガルメディア事業であり、高単価商品の反動をどこで止められるかが重要です。

通期予想に対する営業利益の進捗率は64.3%にとどまっています。会社は予想を据え置いていますが、達成には第4四半期単独で5億円を超える営業利益が必要になります。前期の第4四半期単独の営業利益を大きく上回る水準であり、第4四半期の追い込みと予想の扱いが今後の焦点になるでしょう。

まとめ

  • 2026年10月期第3四半期累計の売上収益は53億12百万円(前年同期比+5.3%)と増収
  • 営業利益は9億64百万円(同-18.3%)、税引前四半期利益は9億61百万円(同-18.2%)と減益
  • 親会社の所有者に帰属する四半期利益は6億35百万円(同-22.1%)、基本的1株当たり四半期利益は89.26円
  • 第3四半期単独の営業利益は3億12百万円で、前年同期比約5%減と減益幅が縮小
  • リーガルアライアンス事業の売上収益は25億13百万円(+29.9%)で、リーガルメディア事業の24億68百万円(-12.5%)を上回った
  • リーガルプロテクト事業は新サービスの先行費用で1億35百万円のセグメント損失
  • 自己株式の取得5億円と配当金の支払4億64百万円で、現金及び現金同等物は17億58百万円に減少
  • 資産合計42億29百万円、資本合計28億36百万円、親会社所有者帰属持分比率66.5%
  • 通期予想は据え置きで、売上収益70億円(前期比+5.3%)、営業利益15億円(同+5.7%)
  • 通期の税引前利益予想は14億50百万円(同+2.5%)、当期利益予想は9億80百万円(同-4.3%)、配当予想は65円

ITトレンド編集部

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