株式会社オークファン(証券コード:3674)は、膨大な売買データとAI技術を活用し、流通の可視化と効率化を進める企業です。商品相場データを扱う『aucfan.com』などのソリューション事業に加えて、BtoB卸モール『NETSEA』や展示商談会を擁するプラットフォーム事業を運営しています。近年は自社ブランドとライブコマースを新たな成長領域と位置づけ、事業ポートフォリオの転換を進めています。
2026年9月期 第3四半期連結累計期間(2025年10月〜2026年6月)の業績は、売上高41億48百万円(前年同四半期比+17.0%)、営業利益51百万円(同+73.0%)となりました。経常利益は88百万円(同+74.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は2百万円です。前年同四半期は31百万円の四半期純損失でしたので、最終損益は黒字に転じています。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社オークファン(証券コード:3674)徹底解説】2026年9月期第2四半期──D2Xコマース投資先行で営業損失転落、売上9.6%増も黒字化は下期へ
1. 通期着地を左右する市場環境
同社が主戦場とするのは、国内のBtoB取引市場です。同社は決算短信のなかで、国内のBtoB取引市場を約300兆円規模と推定し、そのうちEC化されていない取引が約200兆円に上ると述べています。この推計は、経済産業省が2025年8月26日に発表した電子商取引に関する市場調査のBtoB-EC市場規模の業種別内訳から推察したものとされています。
この未開拓領域の大きさが、同社の事業機会の源泉です。取引のデジタル化が進めば、卸モールやデータ活用サービスの需要は広がります。一方で、市場が大きいということは、参入する事業者も多いということでもあります。プラットフォームとしての集客力と、扱う商材の供給力の双方が問われる環境です。
同社は近年、この基盤を活かして事業モデルの重心を移しつつあります。中国を中心とする生産・供給ネットワークを活用し、商品企画・製造から国内販売までを一貫して行う体制の構築です。仲介から自ら商品を扱う立場への移行は、売上規模を押し上げる一方で在庫と先行投資の負担を伴います。通期の着地は、この転換に伴うコストをどこまで吸収できるかに左右されると考えられます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社オークファン 2026年9月期 第3四半期決算短信(PDF)
第3四半期連結累計期間の売上高は41億48百万円となり、前年同四半期の35億44百万円から+17.0%の増収となりました。第2四半期累計時点の増収率が9.6%でしたので、第3四半期にかけて成長が加速した形です。自社ブランドと『NETSEA MallLive』を中心とするライブコマースの売上規模拡大が牽引しました。
営業利益は51百万円(前年同四半期比+73.0%)、経常利益は88百万円(同+74.5%)となりました。第2四半期累計では4百万円の営業損失でしたので、第3四半期の3か月間で営業損益が黒字に転じたことになります。商品開発や販売体制の構築に伴う先行投資は続いているものの、売上拡大によって投資負担の吸収が進んだと同社は説明しています。
親会社株主に帰属する四半期純利益は2百万円で、前年同四半期の31百万円の四半期純損失から黒字転換しました。1株当たり四半期純利益は0.21円です。営業利益・経常利益の伸びに比べて最終利益がわずかな水準にとどまっているのは、税金費用などの影響によるものと見られます。
財政状態については、第3四半期連結会計期間末の総資産が73億30百万円(前連結会計年度末は70億84百万円)となりました。流動資産は64億94百万円で、商品が4億60百万円増加したことが目立ちます。自社ブランドやライブコマースの拡大に伴い、在庫を持つ事業構造へと変わりつつある様子がうかがえます。固定資産は8億35百万円と、投資有価証券の2億97百万円減少などにより縮小しました。
負債合計は32億47百万円(前連結会計年度末は29億91百万円)、純資産合計は40億83百万円(同40億92百万円)です。通期予想は据え置かれており、売上高56億円、営業利益50百万円、経常利益40百万円、親会社株主に帰属する当期純利益20百万円が見込まれています。
3. 直近決算の重要ポイント
最も注目すべきは、第3四半期累計の営業利益・経常利益がすでに通期予想の水準に達している点です。営業利益51百万円は通期予想の50百万円を、経常利益88百万円は通期予想の40百万円を上回っています。にもかかわらず、同社は業績予想を据え置きました。
据え置きの理由として、同社は第4四半期の事業進捗等の精査に加えて、将来の課税所得見通し等を踏まえた繰延税金資産の回収可能性と、親会社株主に帰属する当期純利益への影響を現在精査中であることを挙げています。利益の上振れ余地はあるものの、最終損益には税効果会計の判断が影響し得るという構図です。
二つ目のポイントは、成長ドライバーの交代が数字として明確になったことです。プラットフォーム事業の売上高は19億92百万円と前年同四半期比+62.9%となり、全社の増収をほぼ単独で牽引しました。一方でソリューション事業は21億99百万円(同+1.0%)とほぼ横ばいです。
三つ目は、セグメント区分の変更です。2026年9月期より、インキュベーション事業として区分していた中国の子会社2社が、プラットフォーム事業へ区分変更されました。海外事業などの新規事業開発としての検証・立ち上げフェーズが進捗したことを踏まえた措置であり、前年同四半期比は組み替え後の数値で比較されています。
4. Q3時点の事業進捗
同社の収益は三つのセグメントで構成されています。それぞれ収益モデルが大きく異なるため、全社の数字だけでは実態がつかみにくい構造です。第3四半期時点では、稼ぐ事業と投資する事業の役割分担がはっきりしてきました。
ソリューション事業は売上高21億99百万円(前年同四半期比+1.0%)、営業利益4億87百万円(同1.4%増)となりました。営業利益率が2割を超える高収益セグメントであり、全社の利益基盤を支えています。『aucfan marketing』の広告運用サービス売上が好調に推移した一方、『aucfan.com』では2024年9月期に実施した会員機能強化に伴う価格改定の効果が前年同期に寄与していた反動で課金売上が減少しました。
プラットフォーム事業は売上高19億92百万円(同+62.9%)、営業損失1億27百万円(前年同四半期は1億12百万円の営業損失)です。『NETSEA』と『OSR』ではコスト効率化と一時的な需要増により収益性が改善しました。自社ブランド「AP LAB」「KACHIKA」は商品ラインアップと販売チャネルの拡充で売上が拡大しています。インキュベーション事業は売上高37百万円(同-84.7%)、営業損失36百万円(前年同四半期は41百万円の営業損失)と、選別的な投資姿勢が続いています。
5. 業界の注目ポイント
仲介モデルから商品を持つモデルへの転換
同社が進めているのは、取引を仲介する立場から、自ら商品を企画・製造して売る立場への移行です。自社ブランド「AP LAB」「KACHIKA」は、中国の生産ネットワークを活用して商品を企画・製造し、国内で個人向け販売と法人向け卸売を展開しています。売上単価が高くなるため、増収効果は大きく表れます。
その裏側にあるのが在庫リスクです。第3四半期連結会計期間末の商品は前連結会計年度末から4億60百万円増加しました。売れ行きが計画どおりであれば運転資本の増加にとどまりますが、想定を外せば評価損の要因になり得ます。増収の質を測るうえで、在庫回転の推移は継続して確認したい指標です。
ライブコマースという新チャネルの可能性
『NETSEA MallLive』を中心とするライブコマースでは、同社が商品を仕入れてライブ配信を通じて販売するとともに、ライバーや販売事業者に対する商材提供機能の拡充を進めています。既存のBtoB卸の商材と配信という販路を組み合わせる発想であり、同社の強みを活かしやすい領域と考えられます。
もっとも、この領域も立ち上げ期にあります。プラットフォーム事業のセグメント損失は前年同期に比べ拡大しました。ただし同社は、第3四半期連結会計期間のセグメント損失が前四半期に比べて縮小したとも説明しています。四半期を追うごとに投資負担の吸収が進んでいるかどうかが、来期に向けた重要な観察点になりそうです。
安定収益と成長投資のバランス
ソリューション事業が生み出す4億87百万円の営業利益が、プラットフォーム事業の1億27百万円の営業損失とインキュベーション事業の36百万円の営業損失を吸収する構造になっています。既存事業のキャッシュ創出力を原資に、新領域へ投資を振り向ける形です。事業ポートフォリオの転換としては理にかなった配置と見られます。
ただし、この構造は安定収益源の踏ん張りに依存します。ソリューション事業の増収率は+1.0%にとどまっており、成長余地は限定的です。投資の回収時期が遅れれば、全社の利益水準は再び圧迫されかねません。成長領域の損失縮小ペースが、今後の全社損益を左右すると考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
オークファンの2026年9月期第3四半期は、事業ポートフォリオの転換が数字として結実し始めた決算だったと受け止めています。売上高41億48百万円(+17.0%)という伸びは、第2四半期累計の+9.6%から明確に加速しました。前期通期が46億57百万円の売上で営業損失2億01百万円だったことを踏まえると、今期の改善幅は小さくありません。
とりわけ評価できるのは、第2四半期累計で4百万円の営業損失だった状態から、第3四半期累計で51百万円の営業利益へ転じた点です。売上拡大による投資負担の吸収が実際に進んでいることを示しています。通期予想の営業利益50百万円をすでに超えていることからも、着地は計画を上回る可能性があると見られます。
一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益が2百万円にとどまっている点は、収益力の厚みという観点では課題です。同社が繰延税金資産の回収可能性を精査中としていることも、最終損益の不確実性を示しています。増収の原動力が在庫を伴う商品販売にある以上、売上の伸びだけでなく在庫と資金繰りを併せて見る必要があります。第4四半期に成長領域の損失がさらに縮小するかどうかが、来期の姿を占う手がかりになりそうです。
7. まとめ
株式会社オークファン(証券コード:3674)の2026年9月期 第3四半期決算のポイントを整理します。
- 売上高は41億48百万円(前年同四半期比+17.0%)と加速。第2四半期累計の+9.6%から伸びが拡大
- 営業利益は51百万円(同+73.0%)、経常利益は88百万円(同+74.5%)。第2四半期累計の営業損失から黒字転換
- 親会社株主に帰属する四半期純利益は2百万円。前年同四半期の31百万円の純損失から黒字化
- プラットフォーム事業が売上高19億92百万円(+62.9%)と牽引。ソリューション事業は21億99百万円(+1.0%)で営業利益4億87百万円
- 総資産は73億30百万円、純資産は40億83百万円。商品が4億60百万円増加し在庫型の構造へ移行
- 通期予想は据え置きで、売上高56億円、営業利益50百万円、経常利益40百万円、当期純利益20百万円
- 第3四半期累計の営業利益・経常利益はすでに通期予想水準に到達。繰延税金資産の回収可能性を精査中
ITトレンド編集部
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