楽天銀行株式会社(証券コード:5838)は、楽天グループ株式会社を筆頭株主とするインターネット専業銀行です。連結子会社23社および非連結子会社5社で構成され、日本国内では個人・法人向けに、台湾では樂天國際商業銀行股份有限公司を通じて銀行サービスを提供しています。連結子会社の楽天信託株式会社は信託業法に基づく信託業務を担っています。
銀行業のため、一般的な事業会社の売上高・営業利益にあたる指標は用いません。経常収益・経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益が主要な指標となります。また、当行グループは銀行業の単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績は記載されていません。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結経常収益は784億25百万円となりました。前年同期比+36.4%の増収です。連結経常利益は302億09百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は209億65百万円で、前年同期比+24.5%の増益となりました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
楽天銀行株式会社(証券コード:5838)の決算解説
今期スタートを取り巻く市場環境
今期のスタートで最も大きな環境変化は、金融政策の転換です。日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合において政策金利を引き上げました。欧州中央銀行も同月の理事会で利上げを実施し、米連邦準備制度理事会は政策金利を据え置いています。
国内金利の上昇は、銀行にとって運用利回りの改善につながります。同時に預金金利の引き上げを通じて調達コストも上昇するため、双方の変化の差が収益を左右します。今回の楽天銀行の決算は、この金利環境の変化が数字にはっきりと表れた四半期といえます。
もう一つの背景が、個人の生活や企業活動のデジタルシフトです。実店舗を持たないデジタル銀行のサービスニーズは高まっており、口座数の拡大が決済・為替手数料の増加につながる構造があります。同社は利便性の高い決済インフラの運営、セキュリティの強化、内部管理態勢の整備を進めています。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
楽天銀行株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
連結経常収益は784億25百万円となりました。前年同期から209億20百万円の増加で、伸び率は+36.4%です。内訳を見ると、資金運用収益が630億95百万円と前年同期から194億82百万円増えました。運用資産の増加と、日銀による政策金利の引き上げに伴う運用利回りの上昇が要因です。
役務取引等収益は135億21百万円で、前年同期から15億53百万円の増加でした。口座数の増加と生活口座化の進展により、受入為替手数料、口座振替手数料、カード関連受取手数料等が伸びています。その他業務収益は外貨預金や新型定期預金(仕組預金)に係る収益等が減少し、1億63百万円減の11億40百万円となりました。台湾の樂天國際商業銀行股份有限公司は、前年同期から5億円増の15億71百万円の経常収益を計上しています。
一方の連結経常費用は482億16百万円で、前年同期から146億55百万円増加しました。資金調達費用が193億44百万円と82億80百万円増えています。預金残高の伸長と、2026年2月に実施した普通預金金利の引き上げによる預金利率の上昇が要因です。役務取引等費用は85億49百万円、営業経費は人件費やソフトウエア償却費、業務委託費、広告宣伝費等の増加により167億52百万円となりました。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で重要なのは、収益と費用の伸び方の差です。経常収益が209億20百万円増えたのに対し、経常費用は146億55百万円の増加にとどまりました。この差が経常利益の押し上げにつながり、連結経常利益は前年同期から62億65百万円増の302億09百万円となりました。
収益面の主役は資金運用収益です。194億82百万円の増加は、経常収益の増加額209億20百万円の大半を占めます。政策金利の引き上げが運用利回りに直接反映される構造が、収益拡大を支えていると見られます。ただし調達側でも資金調達費用が82億80百万円増えており、利ざやの拡大幅は収益の伸びほど単純ではありません。
事業規模も着実に広がりました。2026年6月末時点の口座数は1,846万口座、単体の預金残高は13兆3,656億06百万円に達しています。第1四半期の親会社株主に帰属する四半期純利益は209億65百万円で、前年同期から41億30百万円の増加、1株当たり四半期純利益は120円14銭となりました。
今期の重点領域と収益構造
同社は商品・サービスの拡充と資金運用の拡大を通じて、事業規模の拡大と収益性の向上に注力しています。第1四半期には、顧客の中長期的な資産形成ニーズに応えるため、2026年6月より第一フロンティア生命保険株式会社と共同で企画・開発したインターネット完結型の一時払個人年金保険の取扱を開始しました。
口座の獲得と利用促進にも力を入れています。「開業25周年記念キャンペーン」「1,800万口座突破記念キャンペーン」を実施したほか、円定期預金に特別金利を適用する「夏のボーナスキャンペーン」を展開しました。また千葉県佐倉市の公金の口座振替サービスの取扱を開始し、生活口座としての利用を広げています。
資産サイドでは、貸出金が投資用マンションローンや提携ローン等の残高増加により、前連結会計年度末比1,740億82百万円増の6兆1,171億53百万円となりました。買入金銭債権は楽天カード株式会社のクレジットカード債権の証券化資産残高等の増加により、同446億円増の3兆2,432億68百万円です。負債側では普通預金が2,936億42百万円増の11兆639億3百万円、定期預金が1,969億88百万円増の2兆3,765億8百万円となりました。
業界の注目ポイント
金利のある世界で銀行の収益構造が変わる
長く続いた低金利環境では、預貸の利ざやから収益を得ることが難しい状況でした。政策金利の引き上げが進むと、運用資産の利回りが改善し、資金運用収益が伸びやすくなります。今回の楽天銀行の資金運用収益が194億82百万円増えたのは、その典型例です。
ただし調達コストも同時に上がります。同社では預金残高の伸長と普通預金金利の引き上げにより、資金調達費用が82億80百万円増加しました。金利上昇局面では、運用と調達のどちらの変化が速いかによって収益への影響が変わります。預金の構成と貸出資産の金利改定サイクルを見る視点が重要になると考えられます。
生活口座化が決済関連の手数料収益を押し上げる
銀行口座が給与振込や公共料金の引き落としに使われるようになると、取引の頻度が高まります。受入為替手数料や口座振替手数料といった役務取引等収益は、この利用頻度に連動して積み上がる性質があります。同社の役務取引等収益が15億53百万円増えた背景にも、この構造があります。
法人取引でも同じ流れが見られます。企業が決済や請求の処理をオンラインで完結させる動きが広がるなか、銀行側にはシステム連携のしやすさが求められます。会計ソフトや請求管理の仕組みと接続できるかどうかが、法人顧客の定着を左右する要素になりつつあります。
デジタル銀行はシステム投資と収益拡大の両立が課題になる
実店舗を持たないデジタル銀行は、店舗網の維持費がかからない分、システムへの投資が事業の中核となります。同社の営業経費が増加した要因にも、人件費に加えてソフトウエア償却費や業務委託費が挙げられています。
セキュリティの強化や内部管理態勢の整備は、規模の拡大に伴って必要性が増す領域です。口座数が1,846万に達する規模では、不正利用対策や本人確認の仕組みへの投資は避けられません。これらのコストを上回るペースで収益を伸ばせるかが、収益性の維持を左右すると考えられます。
ITトレンド編集部の考察
今回の第1四半期は、金利上昇の恩恵が明確に表れた決算でした。連結経常収益784億25百万円のうち、資金運用収益が630億95百万円を占めています。収益構造が資金運用に大きく依存していることが、あらためて確認できる内容です。
注目したいのは、収益の伸びに対して利益の伸びが緩やかな点です。経常収益が+36.4%伸びたのに対し、経常利益は302億09百万円で26.2%の増加、純利益は209億65百万円で+24.5%の増加にとどまりました。資金調達費用と営業経費の増加が、収益拡大の一部を吸収した形です。金利上昇は収益機会であると同時に、調達コストの上昇要因でもあることが数字に表れています。
通期予想は、2026年5月12日に公表した内容を今回修正しました。経常収益3,434億56百万円(前期比+34.3%)、経常利益1,257億80百万円(同+22.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益881億45百万円(同+20.6%)という見通しです。第1四半期の純利益209億65百万円は通期予想の約24%にあたり、進捗としては順調といえます。口座数と預金残高の拡大が続くなかで、調達コストの上昇をどこまで吸収できるかが今後の焦点になりそうです。
まとめ
- 2027年3月期第1四半期の連結経常収益は784億25百万円(前年同期比+36.4%)
- 連結経常利益は302億09百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は209億65百万円(同+24.5%)
- 1株当たり四半期純利益は120円14銭
- 資金運用収益は630億95百万円(前年同期から194億82百万円増)、役務取引等収益は135億21百万円(同15億53百万円増)
- 連結経常費用は482億16百万円で、資金調達費用は193億44百万円、営業経費は167億52百万円
- 2026年6月末の口座数は1,846万口座、単体預金残高は13兆3,656億06百万円
- 貸出金は6兆1,171億53百万円、買入金銭債権は3兆2,432億68百万円
- 総資産は16兆4,863億90百万円、純資産は4,182億94百万円
- 銀行業の単一セグメントのため、セグメント別の経営成績の記載は省略
- 2027年3月期通期予想は修正され、経常収益3,434億56百万円(前期比+34.3%)、経常利益1,257億80百万円(同+22.0%)、当期純利益881億45百万円(同+20.6%)
- 予想1株当たり当期純利益は505円10銭、予想年間配当は0円00銭
ITトレンド編集部
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