TPiCS-Xの導入事例【明神水産 株式会社 様】
TPiCSの活用で利益重視の計画生産を目指す
- 業種
- 飲料・たばこ・飼料製造業
- 事業内容
- ・食料品製造(鰹のたたき) ・鰹の一本釣り ・居酒屋経営
- 導入前の課題
- 商品の個別原価の正確な把握と未来需要を先読みできる計画管理の環境
- 導入後の結果
- 自前で精度の高い見通しが立てられるように
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商品の個別原価の正確な把握と未来需要を先読みできる計画管理の環境
明神水産㈱は1973年に一本釣り鰹漁の会社として発足して、86年に鰹の加工販売を開始した。 社内の合言葉は「一本釣り藁焼き鰹たたきを全国に」であり、従業員は誇りを持ちつつ日々、仕事に励んでいる。 加工に使う鰹の大部分は、国内の鰹水揚げ量の9割以上を占める静岡県の焼津の業者から買付けている。 というのも、加工品に使うのは冷凍鰹に限られ、3艘の冷凍漁船だけでは需要に見合う量を揃えるのが困難なためだ。 同社が買付ける魚はすべて一本釣り鰹であり、その中でも特に品質の優れたB-1鰹(ブライン凍結方式1級品)と呼ばれる鰹に限られる。業者が一次加工で節(ふし:頭や骨を取った身の部分)の状態にした魚を引き取り、それ以降のすべての加工と商品販売を社内で行うという流れである。節の状態まではどこの水産物加工会社も条件は同じだが、同社商品が消費者から支持を得ているのは、藁焼きをはじめ繊細な加工に優れるためだ。 このように、商品には絶対の自信を持つ同社だが、生産や工程の管理は創業以来、ほとんど行われてこなかった。資金に余裕のあるときは魚を多めに買い付け、商品が余りそうになると安値で売りさばくなど、売上優先のきわめて大雑把な商売を続けてきた。 こうした中、近年は口コミなどで売上が増え始め、初めのうちは、特にやり方を変えなくても、業務に支障を来すことはなかった。しかし、その後もどんどん増え続け、業務負荷が顕在化してきた。売上の波に伴う作業の波が現れ、残業も増えた。 「けれども、『仕事というのは、そういうものだろう』と、誰もが割り切って受け入れていたのです」と業務推進部部長の明神亮太氏は振り返る。今から約10年前、当時、製造部にいた明神氏は、「過度の作業負荷がかからないよう、やり方を改善できないか」と考えた。そして営業から聞いた情報を書きとめ、前年の動きと比べて「今年はこのくらいになりそうだから、早めに準備したほうが良い」と何度か提案した。 「ただし、得られる情報の精度は高くはなく業務改善には至りませんでした。今から思えば生産管理の意識がない中での情報収集にすぎなかったからです」(明神氏)。 生産管理システムの導入に動いたのは2020年9月のことだ。明神氏らが進言するまでもなく、代表取締役経営企画本部長の森下幸次氏から「商品の個別原価の正確な把握」と、「未来需要を先読みできる計画管理の環境をつくること」を目的としたシステム導入案が示されたのである。導入支援は、株式会社システムユニに依頼した。当初、TPiCSのほか他社のパッケージソフトも候補として挙がったが、製造工程に適した機能や未来を見通せる機能、それらを含めたコストパフォーマンスの良さなどからTPiCS4.1を選定した。
運ばれてきた鰹のカッティング工程
製造工程に適した機能や未来を見通せる機能、それらを含めたコストパフォーマンスの良さ
パックされた鰹は重さにより仕分けられる
導入が決まるとプロジェクトチームを結成。さらに運用担当者を決め、2021年の年明けから稼働に向けての準備をスタートさせた。メンバーは製造経験はあるものの、全員が生産管理システムについては無知の状況だった。作業の実績入力を担当した製造部係長の田上雄祐氏は当時の状況について、「講師の方に来ていただき説明を受けましたが、誰もがピンと来ない様子で、私自身も機能を覚えるだけで精一杯でした」と話す。 TPiCSを運用するには、基本構成や商品・資材アイテムのマスター整備が必須となる。しかし、「自社のアイテム数すら把握できておらず、道のりは長いという感じがしたものです」(田上氏)。 実際に、一度にすべてのマスター登録を行うのは困難と判断し、500アイテム(現在は2100アイテム)を登録した時点で同年3月の仮稼働を迎えた。それでも、ひと通りの準備ができた頃には、選抜された担当者たちの意識はかなり上向いた。
自前で精度の高い見通しが立てられるように
製造部の残業がゼロに
TPiCSの画面
早い時期に工程ごとの作業の基準値を決めたのもシステム運用に役立った。基準値があると、例えば焼き工程の入った日であれば、1日にどれだけの量が焼け、それが基準値を超えたか下回ったかがわかり、下回った場合はその原因がどこにあるかまで深掘りすることができるからだ。「私は元来、こういう仕事は向いていないと思っていましたが、システム運用に携わったことでデータに関する意識が変わりました」(田上氏)。 商品の販売先は生活協同組合(生協)、ギフト品としての直販、民間スーパーの順であり、ブランド力維持のため、飲食店や激安スーパーなどへの販売は行っていない。この商売の難しさは、需要が正確に読み切れないことだ。また生協は単一組織ではなく地域ごとに独立しており、それぞれの生協で注文内容に細かな指定がある。中には1回の企画で5万パックの注文が納期10日前にくることもある。問題はそれらの事前情報がアバウトなものであったことだ。「かつては、そのアバウトな情報をたよりに製造していましたが、結果としてすごく余ることもあれば、魚が足りなくなることも頻繁に起きました」(明神氏)。しかしTPiCSを入れ、社内で実績に基づくデータが取れるようになると、アバウトな情報をあてにしなくても、自前で精度の高い見通しが立てられるようになった。その結果、2023年は売上増に反比例して、年間を通じて製造部の残業はゼロになった。「先が見えるようになると、どの工程が詰まってくるかがわかり調整がしやすくなります。仮にこの先残業することがあっても、数量の動きを見て、前の月からにするか、次の月にするかの判断ができます」と生産計画の担当でもある製造部部長の山﨑達也氏は話す。 TPiCSを入れてからは製造だけでなく、営業部門でもデータの重要性が認識され、情報の精度が良くなった。その結果、実績や在庫管理が確実に実行でき、原価管理もある程度は実績ベースで行えるようになった。「TPiCSを入れて一番良かったのは、社員のデータに関する意識の高まり」と専任者らは異口同音にいう。 そして次に目指すのは、実績だけの管理から未来が見える計画管理へとステップアップすることだ。同社商品の繁忙期は、5月から7月上旬である。鰹は11月から2月までは漁ができないので、1年のスパンで見ると前年の9月くらいから翌年の5~7月を目指して在庫を構える(つくりだめ)ことが必要となる。その際、一番のネックは顧客ごとに注文がマチマチの外装包装工程である。焼きと包装を同時に行うのは不可能なので、「つくれる状態をつくる」ことを目指している。 一方、システム運営のほうもレベルアップが必要だ。「例えば現在、月1回の所要量計算を週次にすることも検討しています。計画というのは必ずズレが生じるものなので、スパンが短いほど対応がしやすいからです。TPiCS研究所さんからもいわれていますが、長期的な視野に立つ一方、スパンを少しずつ縮めながらグルグル回していくことも大事だと思っています」(明神氏)。売上優先から利益重視の業務運営へ。同社にとって、いまやTPiCSは不可欠のツールになりつつある。
TPiCS-X
変化する市場に対応するために、個別生産や繰返生産に特化した最新の生産管理システムです。製品の多様化に対応し、工場のスムーズな生産を実現します。
株式会社 ティーピクス研究所
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