関西電力株式会社は、発電・販売を担うエネルギー事業を中核に、送配電事業、情報通信事業、不動産事業を展開する電力会社グループです。2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の連結売上高は1兆79億62百万円(前年同期比+9.8%)となりました。
一方で、営業利益は203億71百万円(同-84.2%)、経常利益は528億22百万円(同-60.8%)と大幅な減益です。親会社株主に帰属する四半期純利益は、関係会社株式の売却益を計上したことで1,370億61百万円(同+38.2%)に増えました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【関西電力株式会社(証券コード:9503)徹底解説】電力会社の収益構造と多角化の現在地
なお、今回の決算短信では、経営成績の増減要因の説明は決算説明資料に記載するとされています。本記事では、決算短信に記載された財務数値とセグメント情報をもとに、業績の中身を整理します。
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
電力会社の業績は、燃料や電力の市場価格、為替、需要の動向など、外部環境の影響を大きく受けます。売上高が増えても、費用がそれ以上に増えれば利益は減るため、四半期ごとの損益は振れやすい業態です。
関西電力は2026年4月に「関西電力グループ 経営計画2026」を策定しました。「関西」「電力」を超えて、お客さまや社会に新たな価値を届けることを掲げ、深化した「KX toward 2040」によって実現を目指すとしています。
この方針に合わせ、当第1四半期から報告セグメントを見直しました。事業化段階に至ったハイパースケールデータセンター事業を、エネルギー事業から情報通信事業に移しています。生活・ビジネスソリューション事業に含めていた不動産事業は、成長の柱として独立させました。
データセンター事業を事業化段階と位置づけた点は、生成AIの普及などを背景とするデータセンター需要の拡大を映していると考えられます。電力の安定供給を担う企業が、電力を大量に使う事業にも自ら取り組む構図です。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
関西電力株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
当第1四半期の売上高は1兆79億62百万円で、前年同期の9,177億91百万円から増加しました(前年同期比+9.8%)。営業利益は203億71百万円(同-84.2%)、経常利益は528億22百万円(同-60.8%)です。純利益は1,370億61百万円(同+38.2%)となりました。
損益計算書を見ると、営業費用は9,875億90百万円と前年同期の7,888億42百万円から25.2%増えました。うち電気事業営業費用は8,005億20百万円と、前年同期から28.8%増加しています。売上高の伸びを費用の伸びが大きく上回ったことが、営業減益につながりました。
通期の推移を見ると、2025年3月期は売上高4兆3,371億11百万円、営業利益4,688億77百万円でした。2026年3月期は売上高4兆566億38百万円(前期比-6.5%)、営業利益4,375億56百万円(同-6.7%)でした。純利益は3,800億51百万円(同-9.6%)です。
2027年3月期の通期予想は、売上高4兆5,000億円(前期比+10.9%)、営業利益2,500億円(同-42.9%)です。経常利益は2,900億円(同-44.1%)、純利益は3,100億円(同-18.4%)を見込んでいます。直近に公表された予想からの修正はありません。会社は期初から、増収ながら大幅な減益を見込んでいました。
第1四半期時点の進捗率は、営業利益8.1%、経常利益18.2%、純利益44.2%です。純利益の進捗率が高いのは、特別利益の計上によるものです。年間配当予想は1株当たり80円(中間40円、期末40円)で、前期の75円から増配の計画です。
3. 直近決算の重要ポイント
セグメント利益(経常利益ベース)を見ると、エネルギー事業は365億64百万円と、前年同期の1,142億17百万円から大きく減りました。全社の経常減益の大部分は、エネルギー事業の減益によるものです。
送配電事業は104億97百万円の損失で、前年同期の22億45百万円の損失から赤字幅が広がりました。情報通信事業のセグメント利益は108億74百万円(前年同期は116億86百万円)と、ほぼ前年並みを確保しています。
不動産事業のセグメント利益は148億63百万円と、前年同期の56億60百万円から大きく増えました。外部顧客への売上高も622億92百万円と、前年同期の345億46百万円から伸びています。エネルギー事業が減益となる中で、不動産事業が利益を下支えした形です。
純利益が増えた主な要因は特別利益です。持分法適用関連会社である株式会社きんでんの自己株式の公開買付けに、関西電力と完全子会社の関電不動産開発が応募しました。株式の一部を売却したことで、関係会社株式売却益1,050億77百万円を計上しています。
営業外収益では、為替差益120億03百万円や持分法による投資利益114億87百万円を計上しました。これにより、経常利益は営業利益を上回っています。財政面では、第1四半期末の自己資本比率が36.3%と、前期末の35.1%から上昇しました。
4. 今期の重点領域と収益構造
新しいセグメント区分での外部顧客への売上高は、エネルギー事業が7,819億35百万円で全体の77.6%を占めます。送配電事業は1,108億56百万円(11.0%)、不動産事業は622億92百万円(6.2%)、情報通信事業は528億77百万円(5.2%)です。
売上の大部分をエネルギー事業が占める構造は変わりません。発電所などの巨大な設備を持ち、電力の販売で投資を回収する典型的なインフラ型のビジネスです。燃料や電力の市場環境によって収益が大きく変動しやすい点が特徴と考えられます。
一方で、経営計画2026では、電力以外の領域を成長の柱として明確に位置づけています。不動産事業を独立したセグメントとし、ハイパースケールデータセンター事業を情報通信事業に移したことは、非電力事業の成長を管理しやすくする狙いと見られます。
当第1四半期は、エネルギー事業の利益が大きく減る中で、不動産事業と情報通信事業が合わせて257億円程度のセグメント利益を確保しました。エネルギー事業の変動を他の事業で補う多角化の意味が、数字として表れた四半期と考えられます。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:データセンター需要と電力インフラ
関西電力は、ハイパースケールデータセンター事業が事業化段階に至ったとして、情報通信事業に移しました。生成AIの普及によりデータセンターの建設が進むと、大量の電力を安定して供給できる立地と電源の確保が重要になります。
電力会社にとって、データセンターは大口の電力需要であると同時に、自ら手がける新たな事業にもなり得ます。電源、送配電網、通信インフラを一体で提供できる点は、電力会社グループならではの強みと考えられます。
データセンターを利用する企業にとっても、電力の安定性や災害への備えは拠点を選ぶ際の重要な判断材料です。
ポイント2:非電力事業による収益の分散
当第1四半期は、エネルギー事業の利益が前年同期から大きく減りました。一方で、不動産事業は利益を伸ばし、情報通信事業もほぼ前年並みの利益を確保しています。
電力事業は社会インフラとして欠かせない一方、外部環境による収益の変動が大きい事業です。不動産や情報通信などの事業を育てることで、グループ全体の収益を安定させる狙いがあると見られます。
今回の特別利益も、保有資産の見直しによるものです。事業ポートフォリオと保有資産の両面で、経営資源の配分を見直す動きが続くかが注目されます。
ポイント3:災害時の事業継続と安否確認の重要性
電力は、災害時にも早期の復旧が求められる基幹インフラです。関西エリアでも、2018年の台風21号で大規模な停電が発生しました。電力会社には、設備の復旧とあわせて、社員や協力会社の安全確認と動員を迅速に行う体制が求められます。
こうした課題は、電力会社に限りません。地震や台風などの災害が起きた際に、社員の安否を素早く把握し、出社の可否や業務の再開を判断することは、多くの企業に共通する事業継続の課題です。
停電や通信障害が起きた状況でも連絡が届くかどうかは、安否確認の仕組みを考えるうえで重要な観点です。インフラの状況を前提に、複数の連絡手段を備えておくことが望ましいと考えられます。
6. ITトレンド編集部の考察
関西電力の第1四半期決算は、本業の大幅な減益と、特別利益による純利益の増加が同時に表れた内容です。営業利益は前年同期比-84.2%と大きく落ち込みましたが、きんでん株式の売却益により純利益は+38.2%となりました。純利益の伸びは一過性の要因によるものであり、本業の収益力とは分けて見る必要があると考えられます。
通期予想でも営業利益は前期比-42.9%の2,500億円が見込まれており、減益自体は会社の想定の範囲内と見られます。ただし、営業利益の進捗率は8.1%にとどまっており、第2四半期以降の推移は注視が必要です。増減要因の詳細は、会社が公表する決算説明資料で確認するとよいでしょう。
中長期の視点では、データセンター事業と不動産事業を成長の柱として明確にした点が注目されます。エネルギー事業の変動を他の事業で補う構造づくりが、経営計画2026の中でどこまで進むかが今後の焦点です。
企業の事業継続の観点では、電力をはじめとするインフラの状況が、災害時の業務継続に直結します。安否確認システムを検討する企業は、停電や通信の混雑が起きた場合でも連絡手段を確保できるかを確認しておくことが重要と考えられます。
7. まとめ
関西電力の2027年3月期第1四半期決算のポイントは以下のとおりです。
- 売上高は1兆79億62百万円(前年同期比+9.8%)と増収
- 営業利益は203億71百万円(同-84.2%)、経常利益は528億22百万円(同-60.8%)と大幅減益
- 純利益はきんでん株式の売却益1,050億77百万円の計上により1,370億61百万円(同+38.2%)
- エネルギー事業のセグメント利益は365億64百万円と前年同期から大きく減少、送配電事業は赤字幅が拡大
- 不動産事業のセグメント利益は148億63百万円に増加し、情報通信事業はほぼ前年並み
- 通期予想は売上高4兆5,000億円(前期比+10.9%)、営業利益2,500億円(同-42.9%)、純利益3,100億円(同-18.4%)で据え置き
- 年間配当予想は80円(前期は75円)
第1四半期時点の営業利益の進捗率は8.1%にとどまります。エネルギー事業の収益の回復と、データセンター・不動産など非電力事業の成長が、今後の注目点です。
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

