株式会社ソリトンシステムズは、認証・情報漏えい対策を中心としたITセキュリティ製品と、映像伝送技術を軸とした映像コミュニケーション事業を展開する情報・通信業の企業です。認証アプライアンス「NetAttest EPS」や多要素認証クラウドサービス「Soliton OneGate」など、自社開発の製品・サービスを国内企業や官公庁に提供しています。
2026年12月期中間期(第2四半期累計)の連結業績は、売上高100億22百万円(前年同期比+15.1%)、営業利益17億77百万円(同+124.0%)となりました。経常利益は18億82百万円(同+140.8%)、親会社株主に帰属する中間純利益は14億47百万円(同+150.8%)です。
増収率が二桁にとどまる一方で、利益が2倍を超える伸びとなりました。粗利率の改善が利益を押し上げた構図です。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
【株式会社ソリトンシステムズ(証券コード:3040)徹底解説】2026年12月期 第1四半期──営業利益+53.2%と収益性が大幅向上
上半期の市場動向と後半への示唆
当中間期の世界経済は、地域によって濃淡のある推移となりました。米国は生成AI関連投資や底堅い雇用環境を背景に堅調でしたが、欧州はエネルギー価格や地政学的リスクの影響で回復が緩やかにとどまりました。中国では不動産市場や個人消費の低迷が継続しています。
日本は物価上昇の影響が見られるものの、設備投資やインバウンド需要に支えられ、緩やかな景気拡大が続きました。IT投資については、企業競争力の強化や業務効率化を目的としたDXへの取り組みが引き続き堅調に推移しています。生成AIを活用したソフトウエア開発や業務自動化支援など、実業務への適用が本格化しており、AI関連投資は幅広い業種で拡大しています。
セキュリティ分野では、ランサムウェアやマルウェア被害、不正アクセスといった従来の脅威に加え、最先端AIモデルの急速な進化がサイバーリスクに新たな影響をおよぼしています。日本政府は官民連携による情報共有の強化や重要インフラの保護に加え、能動的サイバー防御の実現に向けた法制度や運用体制の整備を進めています。
民間企業でもサプライチェーン全体を含めた対策の強化や、AI時代を見据えた継続的なセキュリティ投資を実施する動きが出ています。セキュリティ投資は景気変動の影響を受けにくい性質があるため、下半期も需要は底堅く推移すると見られます。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社ソリトンシステムズ 2026年12月期 中間期(第2四半期)決算短信(PDF)
2026年12月期中間期の売上高は100億22百万円で、前年同期比+15.1%の増収となりました。粗利率は50.1%と、前年同期の44.4%から5.7ポイント改善しています。自社製品・サービスの売上が好調に推移したことが要因です。
営業利益は17億77百万円(前年同期比+124.0%)となり、営業利益率は17.7%と前年同期の9.1%から大きく上昇しました。経常利益は、資金運用による受取利息などで営業外収益を1億16百万円計上したことにより、18億82百万円(同+140.8%)となっています。親会社株主に帰属する中間純利益は14億47百万円(同+150.8%)、1株当たり中間純利益(EPS)は78.06円でした。
財務面では、中間期末の総資産が269億10百万円と前連結会計年度末に比べ6億81百万円増加しました。純資産は141億96百万円で9億40百万円の増加、自己資本比率は52.7%と2.2ポイント上昇しています。現金及び現金同等物は32億78百万円増加し、101億36百万円となりました。
2026年12月期通期の業績予想は上方修正されており、売上高223億円(前期比+12.8%)、営業利益39億円(同+37.1%)、経常利益39億50百万円、親会社株主に帰属する当期純利益26億70百万円(同+16.2%)です。年間配当予想は72.0円とされています。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も重要なのは、粗利率が44.4%から50.1%へ改善した点です。売上の伸びが+15.1%であるのに対し、営業利益が+124.0%と大きく伸びた背景には、この収益構造の変化があります。売上の増加分がほぼそのまま利益に反映される形になりました。
もう一つの注目点は、通期業績予想の上方修正です。上半期の実績を踏まえ、会社は通期の連結業績予想と期末配当予想を引き上げています。中間期の営業利益17億77百万円は修正後の通期予想39億円に対して45%程度の進捗であり、下半期に偏重する事業特性を踏まえた計画と見られます。
一方で、営業外収益に含まれる受取利息などが経常利益を押し上げている点は押さえておく必要があります。手元資金の運用益は市場環境に左右されるため、本業の実力を測る際には営業利益の水準で見るのが妥当と考えられます。
中間期が示す事業の実力
同社の収益の中心はITセキュリティ事業です。当中間期の売上高は94億37百万円(前年同期比+15.3%)、セグメント利益は23億35百万円(同+85.8%)と大幅な増収増益となりました。全社売上の9割超を占める主力事業が、そのまま全社の利益をけん引した形です。
内訳では、主要領域の「商品・製品」が35億31百万円(同+28.8%)、「クラウドサービス」が14億74百万円(同+15.0%)と堅調に伸長しました。旧バージョンのEOL(販売・サポート終了)に伴う更新需要により、認証アプライアンス「NetAttest EPS」の販売が好調に推移しています。買い替え需要が集中する局面にあることが、上半期の伸びを後押ししたと考えられます。
映像コミュニケーション事業は売上高4億95百万円(同+16.0%)と増収でしたが、セグメント損失1億31百万円を計上しました。前年同期の損失1億13百万円から赤字幅はやや拡大しています。「Smart-telecasterシリーズ」が防衛・治安・防災などのパブリックセーフティ分野向けに国内で堅調に推移しました。
Eco新規事業開発は売上高89百万円(同-6.2%)、セグメント損失1億13百万円となりました。売上がほぼ既存の人感センサーのみの構成となり減収です。二つの育成事業が赤字を計上する中で主力事業が全体を支える構造であり、収益の集中度は高いといえます。
業界の注目ポイント
能動的サイバー防御に向けた制度整備
日本政府は官民連携による情報共有の強化や重要インフラの保護を進めており、能動的サイバー防御の実現に向けた法制度や運用体制の整備にも取り組んでいます。制度面の整備が進むことは、企業側のセキュリティ投資を促す要因になると考えられます。
同社の子会社である株式会社サイバー防衛研究所は、慶應義塾大学が国立研究開発法人NEDOから受託した研究開発にパートナーとして技術的支援を提供しています。OT/ITハイブリッド環境のレジリエンスを検証する動的ペネトレーションテスト基盤に関する研究であり、重要インフラ事業者向けの高度なサイバーセキュリティ演習環境の構築につながることが期待されています。
認証・ID管理サービスへの評価
クラウド利用が前提となる中で、認証やID管理は情報セキュリティの入口として重要度を増しています。多要素認証やシングルサインオンは、利便性と安全性を両立する手段として導入が広がっています。
同社の多要素認証クラウドサービス「Soliton OneGate」は、利用者レビューをもとに顧客満足度と市場での認知度が高い製品を四半期ごとに表彰する「ITreview Grid Award」において、多要素認証ツール部門とSSO部門で9期連続、ID管理システム部門で8期連続の「Leader」を受賞しました。継続的な受賞は、導入企業からの評価が安定していることを示していると見られます。
映像伝送技術の社会インフラ活用
映像伝送技術は、防災・治安分野に加えて、遠隔操作や遠隔施工といった領域への応用が進んでいます。通信環境が限られる現場でも安定した映像を送る技術は、人手不足や危険作業の代替という文脈でも注目されています。
同社は国際連合の開発支援機関である国連開発計画(UNDP)と、ウクライナにおける建設機械の遠隔施工技術の普及・実装に向けた協力覚書を締結しました。UNDPが進めてきた瓦礫処理分野の支援をベースに、遠隔施工技術を活用した復興の実現を目指すものです。今後は実証事業を進める段階にあり、収益貢献には時間を要すると考えられます。
ITトレンド編集部の考察
上半期の決算は、粗利率の改善が利益を大きく押し上げた内容でした。売上高100億22百万円(前年同期比+15.1%)に対し、営業利益は17億77百万円(同+124.0%)まで伸びています。自社製品の構成比が高まることで利益率が上がる、という同社の収益モデルが明確に表れた期といえます。
ただし、成長の中心にあるNetAttest EPSの伸びは、旧バージョンのEOLに伴う更新需要という側面があります。更新サイクルが一巡した後も同じペースで伸びるかは、クラウドサービスなど継続課金型の売上をどこまで積み上げられるかにかかっていると考えられます。
映像コミュニケーション事業とEco新規事業開発はいずれも損失計上が続いています。主力事業の収益力が高い今のうちに育成事業を軌道に乗せられるかどうかが、中長期の収益構造を左右する論点になりそうです。
まとめ
- 2026年12月期中間期の売上高は100億22百万円(前年同期比+15.1%)と増収
- 営業利益17億77百万円(同+124.0%)、経常利益18億82百万円(同+140.8%)と大幅増益
- 親会社株主に帰属する中間純利益は14億47百万円(同+150.8%)、粗利率は50.1%へ改善
- ITセキュリティ事業が売上高94億37百万円(同+15.3%)、セグメント利益23億35百万円(同+85.8%)と全体をけん引
- 通期予想は上方修正され、売上高223億円(前期比+12.8%)、営業利益39億円(同+37.1%)、当期純利益26億70百万円(同+16.2%)、年間配当予想72.0円
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

