株式会社メンバーズは、「制作/UIUX」「マーケティングDX」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」「脱炭素DX」の5領域でDX伴走支援サービスを提供する企業です。顧客企業に専任チームが常駐する「あたかも社員®」モデルを特徴とし、11の本部と21の社内カンパニーでグループを構成しています。2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、売上収益57億50百万円(前年同期比+5.2%)と増収を確保したものの、営業損失3億95百万円(前年同期は70百万円の営業損失)、税引前四半期損失3億45百万円、親会社の所有者に帰属する四半期損失2億52百万円と、損益面では赤字が拡大しました。
詳しくは前回の記事もあわせてご覧ください。
株式会社メンバーズ(証券コード:2130)の決算解説
本記事では、今期スタートを取り巻く市場環境、業績の推移、赤字拡大の背景にあるAX領域への先行投資、そして通期予想達成に向けた課題を整理します。
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
2025年11月に開催されたCOP30では「ベレン・ポリティカル・パッケージ」が採択され、1.5度目標達成に向けた緩和・適応・資金・国際協力の加速が国際的な柱として決定されました。日本国内でも「第7次エネルギー基本計画」に基づく温室効果ガス削減の取り組みが本格化しており、企業にはGX(グリーントランスフォーメーション)とDXを両立させる経営が求められています。
一方、生成AIおよびAIエージェントの実用化が進む中で、企業のAI活用はPoC(概念実証)段階から、業務実装やガバナンスが問われる段階へと移行しつつあります。国内AIシステム市場は2029年度に4兆1,873億円規模へ拡大すると予測されており(IDC Japan調べ)、多様なプレイヤーの参入により競争が急速に激化している状況です。
こうした市場変化の中、メンバーズは需要が「導入」から「成果・定着」へ、供給が「受託」から「内製化支援」へと移行する市場構造の変化を捉え、企業のデジタル実装パートナーとしての立ち位置確立を目指しています。ただし、市場の激しい競争環境は同社の収益性にも影響を及ぼし始めています。
2. 業績推移
当第1四半期連結累計期間の売上収益は57億50百万円(前年同期比+5.2%)となりました。重要指標である付加価値売上高(売上収益から外注・仕入を差し引いた社内リソースによる売上高)は55億46百万円(同+4.8%)と、第1四半期として過去最高を更新しています。
一方で損益面は悪化し、営業損益は-3億95百万円(前年同期は70百万円の営業損失)、税引前四半期損益は-3億45百万円(前年同期は43百万円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する四半期損益は-2億52百万円(前年同期は41百万円の損失)と、いずれも前年同期から赤字が拡大しました。前年を大幅に上回る247名の新卒社員が2026年4月に入社したことに伴う人件費・教育研修費の先行発生に加え、成長率・稼働率の低下が主な要因です。
通期の業績予想は、売上収益268億66百万円(前年比+10.0%)、営業利益25億円(同+56.2%)、経常利益24億80百万円(同+51.1%)、純利益17億36百万円(同+43.1%)としています。第1四半期は先行投資が先に立った形ですが、会社側は通期での黒字確保・増益達成を見込んでいます。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で最も注目すべきは、営業損失が前年同期の70百万円から3億95百万円へと拡大した点です。売上収益自体は5.2%の増収を確保しているため、赤字拡大は需要の急減ではなく、コスト構造の変化によるものと見られます。売上総利益率は18.4%(前年同期比0.6ポイント減)、販管費比率は25.3%(同5.0ポイント増)となり、収益性の悪化が数字に表れました。
背景には、低単価案件からの計画的な撤退や、特定スキルの実行にとどまる専門人材ニーズがAIの普及により想定以上に減少したことがあります。DC(デジタルクリエイター)数は2,666名(前期末比210名増)に増加した一方、全体稼働率は74.2%(前年同期比1.9ポイント減)に低下しました。ただし新卒2年目のDCの稼働率は71.8%(同19.3ポイント増)と大幅に改善しており、育成プログラムの効果が着実に表れています。
明るい材料としては、当第1四半期から本格化したAX(AIトランスフォーメーション)領域で、AI/データ関連売上成長率が83.6%、売上に占める比率が15.0%(前年同期比6.4ポイント増)まで伸長したことが挙げられます。売上単価も前年同期比7.8%増と改善しており、事業構造転換の途上にあることがうかがえます。
4. 今期の重点領域と収益構造
メンバーズの収益構造は、顧客企業に専任チームが常駐して伴走支援を行う「あたかも社員®」モデルを核としています。従来のDX伴走支援に加え、当第1四半期からはAI活用による業務・事業変革を支援するAX領域への進出を開始し、2026年7月1日付でAX領域を専門に担うAX本部も新設しました。
今期の重要戦略は「人材育成」「サービス/営業」「将来への投資」の3点です。全社の付加価値売上高に占めるDX領域の比率(DX売上比率)は58.3%(前年同期比6.2ポイント増)となりましたが、想定を下回る伸びにとどまりました。低単価・低成長領域からの計画的な撤退を進める一方、AI駆動開発をはじめとするAX案件が急速に拡大しており、この転換を収益にどうつなげるかが今期の焦点です。
会社側は稼働率の低下を事業構造転換の機会と捉え、DCを高付加価値領域へ重点的にシフトする方針を示しています。既存顧客への深耕を通じた高単価・高成長の実現を図りながら、AX領域の売上成長率をさらに高めていく考えです。
5. 業界の注目ポイント
ポイント1:AI普及による人材ニーズの構造変化
特定スキルの実行にとどまる専門人材のニーズがAIにより想定以上に減少したことは、DX支援業界全体に共通する構造変化を示唆しています。単純作業の代替が進む中で、各社が高付加価値領域へどれだけ早く人材をシフトできるかが競争力を左右する局面に入っています。
ポイント2:AX領域への進出タイミングと先行投資負担
メンバーズが当第1四半期から本格化させたAX領域は、AI/データ関連売上が前年同期比83.6%増と急伸しています。一方でAX本部新設など体制構築には先行コストが伴うため、投資回収のペースが今後の収益性を占う重要な指標になると考えられます。
ポイント3:新卒大量採用がもたらす短期的な収益圧迫
247名という大幅な新卒採用は中長期的な人材基盤強化につながる一方、人件費・教育研修費の先行発生により第1四半期の損益を圧迫しました。新卒2年目の稼働率が大きく改善している実績を踏まえると、育成投資の効果が今後どの程度収益に還元されるかが注目されます。
6. ITトレンド編集部の考察
2027年3月期第1四半期を一言で表すと「増収を確保しつつも、新卒大量採用とAX領域への先行投資により赤字が拡大した転換期の四半期」です。付加価値売上高が四半期として過去最高を更新している点は評価できる一方、営業損失が前年同期の70百万円から3億95百万円へ拡大したことは、投資家として注視すべきポイントと言えるでしょう。
特に注目したいのは、AI/データ関連売上が前年同期比83.6%増という高い成長率を示している点です。DX支援市場そのものがAIによって構造変化を迫られる中、メンバーズが「あたかも社員®」モデルで培った現場常駐の強みをAX領域にどう転用できるかが、中期的な収益改善の鍵になると見られます。
通期の業績予想では営業利益25億円(前年比+56.2%)という大幅増益を見込んでおり、会社側は第1四半期の投資先行を織り込み済みと考えられます。新卒社員の早期戦力化とAX案件の積み上げが計画通り進むかどうか、次四半期以降の動向が注目されます。
7. まとめ
株式会社メンバーズを一言で表すと、「増収を確保しながらも、新卒大量採用とAX領域への先行投資で一時的に赤字が拡大した事業構造転換期の企業」です。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の業績は以下のとおりでした。
- 売上収益 57億50百万円(前年同期比+5.2%)
- 営業損益 -3億95百万円(前年同期は70百万円の営業損失)
- 税引前四半期損益 -3億45百万円(前年同期は43百万円の損失)
- 親会社の所有者に帰属する四半期損益 -2億52百万円(前年同期は41百万円の損失)
付加価値売上高は55億46百万円(前年同期比+4.8%)と第1四半期として過去最高を更新し、AI/データ関連売上成長率は83.6%に達しました。DC数は2,666名(前期末比210名増)に拡大しています。
通期(2027年3月期)の業績予想は、売上収益268億66百万円(前年比+10.0%)、営業利益25億円(同+56.2%)、経常利益24億80百万円(同+51.1%)、純利益17億36百万円(同+43.1%)としています。新卒社員の早期戦力化とAX領域の収益化ペースが、通期の黒字確保・増益達成を左右する焦点となりそうです。
ITトレンド編集部
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