ウイルス対策の機能は4つの役割に分かれる
個々の機能に入る前に、全体をどう捉えるかを押さえましょう。役割で分類すると、自社に足りないものが見えてきます。まずは基本の考え方から確認します。
防ぐ・見つける・戻す・管理する
ウイルス対策の機能は数多くありますが、目的で分けると理解しやすくなります。攻撃を入り口で止める「防ぐ」、入り込んだものを見つける「見つける」、被害から立て直す「戻す」、そして全体の状態を把握する「管理する」。この4つに整理すると、製品同士を比べやすくなります。どの役割に力を入れているかは、製品によって異なります。機能名だけを並べても違いは見えてきません。
従来型の製品は、入り口で止める「防ぐ」に重心がありました。近年は、すり抜けたものを見つけ、被害から戻すところまで担う製品が増えています。管理の機能は、端末の台数が増えるほど効いてくる領域です。自社がどの役割を必要としているかを、最初に決めておきましょう。役割から入ると、営業担当の説明に流されずに判断できます。
自社に必要な役割から絞る
機能が多いほど良い、とは限りません。使わない機能に費用を払うのは得策ではないでしょう。端末が数台の会社と、数百台を抱える会社では、必要な機能がまったく違います。まず守りたい対象と規模を書き出すことが出発点です。扱う情報の重要度によっても、必要な厚みは変わります。顧客情報を多く抱える会社なら、守りを厚くする価値があるでしょう。
個人向けの無料ソフトと法人向け製品の差も、この役割の広さに表れます。個人向けは「防ぐ」が中心で、管理の機能は持たないのが一般的です。法人では、誰の端末がどうなっているかを把握する必要があります。用途に合う範囲を見極めて選びましょう。無料ソフトを業務で使うと、規約に触れる場合もあるので注意が要ります。
脅威を防ぐ・見つける機能
守りの土台となるのが、この二つの役割です。入り口で止める仕組みと、すり抜けたものを捕まえる仕組み。それぞれの働きを見ていきます。
リアルタイムスキャンで即座に止める
リアルタイムスキャンとは、ファイルを開いたときやダウンロードした瞬間に検査する機能です。決まった時刻の一斉スキャンを待たず、その場で危険なものを止めます。感染の多くは操作した瞬間に起こるため、この機能が基本の守りといえます。動作していない状態では、穴が空いたままです。負荷を理由に切ってしまう社員がいないかも、あわせて確認しましょう。
確認したいのは、検査の対象範囲です。メールの添付ファイル、USBメモリの中身、Webサイトからのダウンロードなど、どこまで見るかは製品で差があります。除外の設定ができるかも実務では重要です。自社の業務アプリを誤って止めないよう、調整できる製品を選びましょう。圧縮ファイルの中まで検査するかどうかも、製品ごとに違いがあります。
振る舞い検知とEDRで未知を捕まえる
振る舞い検知は、プログラムの動きそのものから不審さを判断する方式です。既知の一覧に載っていない攻撃にも反応できる点が、照合方式との違いです。EDRは、端末の操作履歴を記録し、侵入後の動きを追跡する仕組みを指します。防ぎきれなかった場合に備える機能といえるでしょう。入られる前提で構えるという、近年の考え方を反映した機能です。
EDRがあると、どの端末から何が広がったかを特定できます。被害範囲の確認と封じ込めが速くなり、復旧の時間も短くできます。ただし、記録を読み解いて判断する人が欠かせません。導入するなら、自社で運用できるか、外部に任せるかまで考えておきましょう。入れただけで放置すると、記録が増えるだけで終わってしまいます。
被害から戻す機能
防ぎきれなかったときに、どこまで立て直せるか。ランサムウェア対策で近年注目される二つの機能を取り上げます。
ランサムウェアの暗号化を検知する
ランサムウェアは、ファイルを勝手に暗号化して使えなくし、元に戻す代わりに金銭を要求する攻撃です。短時間で大量のファイルを次々と書き換える点に特徴があります。この不自然な動きを捉えて、処理を途中で止める機能があります。被害を最小限にとどめるための仕組みです。気づくのが遅れるほど、書き換えられるファイルは増えていきます。
検知した端末をネットワークから自動で切り離す機能を備えた製品もあります。ほかの端末や共有フォルダへ広がるのを防ぐためです。どの段階で止めるか、どこまで自動で動くかは製品によって異なります。想定される被害の大きさに応じて、必要な範囲を見極めましょう。共有サーバーを守れるかも、確認しておきたい点です。
暗号化されたファイルを自動で復旧する
暗号化されてしまったファイルを、元の状態に戻す機能を持つ製品もあります。書き換えられる前の状態を控えとして保持し、検知後に自動で書き戻す仕組みです。業務を止めずに立ち直れる可能性が高まります。バックアップから戻す作業に比べ、手間と時間を大きく減らせるでしょう。復旧の待ち時間が短ければ、取引先への影響も抑えられます。
ただし、戻せる範囲や保持できる期間には限りがあります。すべてのファイルが必ず復旧できるとは限らない点に注意が必要です。この機能があっても、定期的なバックアップは欠かせません。二重の備えとして位置づけると、判断を誤らずに済みます。どこまで戻せるのかを、契約前に具体的に確認しておきましょう。
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端末と入り口を管理する機能
守りを保つには、状態の把握と入り口の統制が要ります。管理を担う三つの機能を確認しましょう。
一元管理コンソールで全端末を把握する
コンソールとは、管理者が使う操作画面のことです。全社の端末について、導入の有無や更新の状態、検知の履歴を一つの画面でまとめて確認できます。台数が増えるほど、個別の確認は現実的ではなくなります。どこに問題があるかを一目で把握できる点が、この機能の価値です。数十台を超えたあたりから、必要性を実感する企業が増えます。
クラウド型のコンソールなら、社外に持ち出した端末の状態も追えます。拠点や在宅勤務の端末を含めて、同じ基準で見渡せるでしょう。管理できる台数の上限や、拠点ごとに権限を分けられるかもあわせて確認したい点です。運用の規模に見合うかを見極めてください。日本語の画面で扱えるかどうかも、日々の負担を左右します。
外部デバイスの接続を制御する
USBメモリなどの外部デバイスは、感染の入り口にも情報漏えいの出口にもなります。私物のUSBメモリを業務端末に挿す行為が、そのままリスクです。この機能では、接続そのものを禁止したり、許可した機器だけを使えるようにしたりできます。物理的な経路を絞る守りといえます。ネットワーク経由の対策だけでは、この経路は防げません。
読み取りだけを許し、書き込みを禁じる、といった細かな設定ができる製品もあります。業務でどうしても必要な部署だけ例外を認める運用も可能です。全面禁止にすると現場が回らない場合もあるでしょう。実態に合わせて、無理のない範囲から始めることをおすすめします。接続の記録が残る製品なら、後から実態を振り返れます。
脆弱性を検知してパッチ適用を管理する
脆弱性とは、OSやソフトに潜む弱点のことです。攻撃者はこの弱点を突いて侵入するため、修正プログラムであるパッチの適用が欠かせません。この機能では、どの端末に危険な弱点が残っているかを自動で洗い出せます。手作業で全端末を調べる負担がなくなります。使っているソフトの種類が多い会社ほど、効果を感じられるでしょう。
製品によっては、パッチの配布まで管理できます。更新が済んでいない端末を一覧で示し、まとめて適用する形です。業務に影響が出ないよう、適用の時間帯を指定できるかも確認しましょう。弱点をふさぐ作業を自動化できれば、守りの水準を保ちやすくなります。危険度の高い弱点から順に手当てできると、優先順位も明確です。
機能を選ぶときの見極め方
機能の全体像がつかめたら、自社に必要なものへ絞ります。多さではなく、使いこなせるかどうかが判断の軸です。
必要な機能を優先度で並べる
まず、自社が最も避けたい被害を決めましょう。業務停止が怖いのか、情報漏えいが怖いのかで、厚くすべき役割が変わります。ランサムウェアを警戒するなら「戻す」機能、持ち出しを警戒するならデバイス制御が候補です。恐れる被害から逆算すると、優先度が定まります。過去に起きたひやりとした出来事も、判断の材料になるでしょう。
すべてを一度にそろえようとすると、費用も運用の負担も膨らみます。優先度の高い機能から導入し、効果を見ながら広げる進め方が現実的です。使わない機能を削れば、その分をほかの対策に回せるでしょう。必要な範囲を見定めて選んでください。上位プランへ後から移れるかを確認しておくと、将来の拡張にも備えられます。
| 役割 | 主な機能 |
|---|---|
| 防ぐ | リアルタイムスキャン、外部デバイスの接続制御 |
| 見つける | 振る舞い検知、EDRによる侵入後の追跡 |
| 戻す | ランサムウェアの暗号化検知、ファイルの自動復旧 |
| 管理する | 一元管理コンソール、脆弱性検知とパッチ適用 |
運用できるかを試して確かめる
機能表を眺めるだけでは、使いこなせるかは分かりません。試用期間を活用し、実際の端末で動かしてみましょう。コンソールの見やすさ、警告の分かりやすさ、動作の軽さは、触って初めて判断できます。カタログ上の高機能が、自社では持て余す場合もあります。試用の期間や台数の制限も、申し込み前に確かめておきましょう。
検証には、実際に運用する担当者を巻き込むことが大切です。設定や確認の手間が現実的かを、その人の目で確かめてもらいましょう。EDRのように専門知識が要る機能は、運用体制まで含めて可否を判断します。無理なく回せる範囲で選ぶことが、長続きの条件です。導入後に使われない機能が出てきたら、次の更新で見直しましょう。
ウイルス対策の機能に関するFAQ
ウイルス対策ソフトの機能についてよく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1:リアルタイムスキャンは必ず必要ですか?
- ファイルを開いた瞬間に検査する基本の守りであり、法人利用ではほぼ必須といえます。検査の対象範囲や、業務アプリを誤って止めないための除外設定ができるかもあわせて確認しておきましょう。
- Q2:EDRは中小企業にも必要ですか?
- 侵入後の追跡ができる有効な機能ですが、記録を読み解く人が欠かせません。社内に担当を置けない場合は、監視を外部に委託できるサービスとあわせて検討すると運用しやすくなります。
- Q3:暗号化されたファイルは必ず戻せますか?
- 自動復旧の機能があっても、戻せる範囲や保持期間には限りがあります。すべてが必ず復旧できるとは限りません。定期的なバックアップとあわせ、二重の備えとして位置づけることをおすすめします。
- Q4:USBメモリの利用は全面禁止すべきですか?
- 全面禁止にすると業務が回らない場合もあります。許可した機器だけを使える設定や、読み取りのみ許可する設定を使い、必要な部署に例外を認める運用が現実的です。
まとめ
ウイルス対策ソフトの機能は、防ぐ、見つける、戻す、管理するの4つに整理できます。リアルタイムスキャンやデバイス制御は防ぐ機能、振る舞い検知やEDRは見つける機能、暗号化検知と自動復旧は戻す機能、コンソールや脆弱性管理は管理する機能です。大切なのは、機能の多さではなく自社が避けたい被害に効くかどうか。優先度をつけて絞り込み、試用で運用できるかを確かめましょう。資料請求から各製品の機能を見比べてみてください。


