
労働時間の種類と定義
まずは労働時間の定義について解説します。
法定労働時間
法定労働時間とは労働基準法で定められた労働時間のことで、「(原則として)1日8時間、1週40時間まで」です。法定労働時間は、使用者(事業者)も労働者も原則的に順守しなければなりません。また、休憩と休日についても定められているため、あわせて以下で確認しましょう。
- ■労働時間
- (原則として)1日8時間、1週40時間まで(ともに休憩時間を除く)
- ■休憩
- 労働時間が6時間を超える場合45分以上、8時間を超える場合1時間以上
- ■休日
- (少なくとも)毎週1日か、4週で4日以上
労働基準法で定められている労働時間・休憩・休日
法定労働時間を超過して労働者に労働させる場合、また休日の労働をさせる場合は、労働基準法第36条にもとづく労使協定(36協定)の締結と、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。
参考:労働基準法
参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省
所定労働時間
所定労働時間とは、企業が定めた労働時間(定時)のことです。具体的には、始業から終業までの合計時間から休憩時間を差し引いたものです。就業規則や雇用契約書などで目にしたこともあるでしょう。
所定労働時間は企業が自由に決められますが、先述の法定労働時間は超過できません。あくまでも「(原則として)1日8時間、1週40時間まで」の範囲内で定めるものです。もし所定労働時間が法定労働時間を超えていた場合、法定労働時間を超えた分は無効とみなされ、残業と同じ扱いとします。
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所定外労働時間とは
所定外労働時間(所定時間外労働)とは、会社が定めた「所定労働時間」を超えて働いた時間のことです。これは法律上の「法定労働時間」を超えるかどうかにかかわらず発生します。
所定外労働と時間外労働の違い
所定外労働:会社が決めた所定労働時間を超えて働いた時間
時間外労働(法定時間外労働):法律が定めた法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた時間
所定外労働は、次の2種類を含みます。
- ●法定時間内残業(法内残業):所定労働時間は超えているが、法定労働時間には達していない労働時間
- ●法定時間外労働:法定労働時間を超える労働時間
この関係を理解しておくと、残業代計算の仕組みや割増賃金の対象を正しく把握できます。
法定時間内残業(法内残業)
所定労働時間を超過していても、法定労働時間に達していない場合は法定時間内残業と呼びます。例えば、所定労働時間が7時間の企業で8時間勤務した場合、超過1時間は法定時間内残業です。
法定時間内残業には労働基準法上の割増賃金支払い義務はありません。同賃金か割増賃金かは企業が独自で定めており、就業規則や雇用契約書で確認する必要があります。
法定時間外労働
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働は法定時間外労働にあたり、割増賃金の支払いが義務付けられています。深夜や休日にかかる場合はさらに割増率が加算されます。
また、法定時間外労働には上限があり、原則として月45時間・年360時間までです。特別な事情がある場合は36協定に基づき、年間720時間以内・単月100時間未満・複数月平均80時間以内の範囲で延長が可能です。36協定については、以下の記事もあわせて確認してください。
所定外労働の扱いを誤ると、未払い残業や労務トラブルの原因になります。勤怠管理システムで正確に管理し、リスクを回避しましょう。
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休日労働の定義
業種によっては、休日出勤の機会もあるでしょう。労働基準法では休日を「(少なくとも)毎週1日か、4週で4日以上」と定めており、「法定休日」と呼びます。土日祝日が休日の企業で「法定休日は日曜のみ」と定めていても問題はありません。日曜日が法定休日の場合、土曜日と祝日は「法定外休日」と定められます。法定外休日の設定は企業ごとに異なるため、就業規則や雇用契約書で確認しましょう。
また、休日における労働は「法定休日労働」と「法定外休日労働」と呼びます。法定休日労働は休日手当としての割増賃金が発生しますが、法定外休日労働では原則として発生しません。ただし法定労働時間を超えた場合や、深夜の労働となる場合には割増賃金が発生します。
法定時間外労働の残業代を算出する方法
労働時間・残業・休日労働の定義に従い、残業代を算出します。計算式や割増賃金の割増率、残業代の算出方法を解説します。
残業時間を確認する
以下の条件の企業を例にします。
- 所定労働時間:1日7時間
- 休日:週2日(土曜=法定外休日、日曜=法定休日)
- 法定時間内残業と土曜日の法定外休日労働には割増賃金なし
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
7時間 | 7時間 | 7時間 | 7時間 | 7時間 | 法定外休日 | 法定休日 |
1日の労働時間は8時間未満、1週の労働時間も35時間のため法定労働時間(1週40時間)を超過していません。そして実労働時間が以下のようになったとしましょう。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|
7時間 | 7時間 | 7時間 | 8時間 | 8時間 | 6時間 | 休 |
木曜日・金曜日に所定労働時間を超えた労働と土曜日に法定外休日労働をしました。1日単位だと、3日とも労働時間が8時間以内のため、法定時間外労働はありません。しかし1週では、合計43時間の労働時間のため、3時間分は法定時間外労働とするのが正解です。勤務時間は1日単位だけでなく、週単位でも確認しましょう。
割増賃金の計算式を用いる
法定時間外労働を確認したあとは、割増賃金を算出します。
割増賃金=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率
※1時間あたりの基礎賃金は、「(基本給+諸手当)÷1か月の所定労働時間数」で算出(月給制の場合)。通勤手当・家族手当・住宅手当など一部の手当は割増賃金の基礎から除外されます。
1か月の平均労働日数や所定労働時間を定めている企業もあるため、就業規則や雇用契約書などを確認しましょう。割増率は以下のとおりです。
- ■法定時間外
- 月60時間まで……1.25倍以上
- 月60時間以上……1.5倍以上(※中小企業も2023年4月1日から適用)
- ■深夜
- 22時から5時まで……1.25倍以上
- ■休日
- 法定休日……1.35倍以上
- ■加算される場合
- 法定時間外(月60時間まで)+深夜労働……1.5倍以上
- 法定時間外(月60時間以上)+深夜労働……1.75倍以上
- 休日+深夜……1.6倍以上
割増賃金の詳細と割増率
上記の割増率より上回る条件を定めている場合は、企業が提示している内容に準じます。
参考:しっかりマスター 割増賃金編|厚生労働省
参考:月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
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従来の勤怠管理業務では、エクセルなどを用いて従業員が出退勤時間を自己申告し、給与計算していました。しかし、働き方改革関連法により労働安全衛生法が改正され、、2019年4月からは「労働時間の客観的な把握」が使用者に義務づけられています。
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労働時間の定義を理解し適切に勤怠を管理しよう
- 法定労働時間:労働基準法で定められた上限時間(原則1日8時間・週40時間)。これを超えて働かせる場合は36協定の締結と届出が必要。
- 所定労働時間:企業が就業規則や雇用契約書で定めた労働時間。法定労働時間を超えて設定することはできない。
- 所定外労働:所定労働時間を超えて働いた時間で、以下2種類を含む。
- ●法定時間内残業:所定労働時間は超えているが、法定労働時間には達していない残業。割増賃金の支払い義務はなく、支給の有無は企業規定による。
- ●法定時間外労働:法定労働時間を超えた残業。割増賃金の支払いが法律で義務付けられており、深夜・休日に及ぶ場合はさらに加算される。
所定外労働のなかでも、法定時間外労働は必ず割増賃金が発生します。正確な労働時間の把握と適切な区分は、未払い残業代や労務トラブルを防ぐためにも重要です。勤怠管理システムを活用し、法律と自社規定の両方に沿った管理を行いましょう。

所定外労働は初めて聞いた!という方も多いと思いますが、これは残業代を計算する上で非常に基礎的、かつ重要な考え方になります。労務担当者が知らずに、実はずっと割増賃金分の未払いが発生しているという状況になっている可能性もあります。2020年4月1日以降に支払われた賃金については、従来の時効が2年から3年に延長され、知らないうちに未払いが発生していた場合のリスクは大きくなるばかりです。こういった事態にならないためにも、きちんと自動で割増計算をしてくれる勤怠管理、給与計算ソフトの導入をおすすめいたします。