
ワークフローとBPMの違いとは
ワークフローとBPM(ビジネスプロセス管理)の違いは、適用範囲と管理対象の広さにあります。
ワークフローは、交通費精算や稟議申請など、部門単位の「申請・承認・決裁」の一連の流れを効率化する仕組みです。一方でBPMは、製品の企画から販売・アフターサービスまでといった「部門横断的な業務プロセス」全体を対象に、可視化・分析・改善することを目的としています。
つまり、ワークフローシステムは「手続きの流れを自動化・迅速化」するものであり、BPMツールは「業務プロセス全体の最適化を支援」するものといえるでしょう。
ワークフローシステムとは

ワークフローシステムとは、企業内で日常的に発生する申請・承認・決裁といった処理を電子化し、スムーズに進行させるためのツールです。
例えば交通費精算であれば、従業員が上長に申請書を提出し、承認された内容を経理が処理するという流れを、システム上で完結できます。決裁ルートの自動設定や、ステータス管理・通知機能などにより、属人化の防止や承認の停滞を防ぎます。
また、経費精算システムや勤怠管理システムと連携して、申請情報を自動反映できる製品もあり、作業時間の短縮や申請ミスの防止にもつながります。
ワークフローシステムの製品情報が知りたい方は、人気製品をランキング形式で紹介している以下のページを参考にしてください。
BPMツールとは

BPMとは、「Business Process Management」の略で、企業の業務プロセスを継続的に分析・改善し、全体の最適化を目指す手法です。その支援ツールがBPMツールです。
例えば、製品が企画・製造され、販売後にカスタマーサポートまで展開される一連の業務プロセスを、「どこでムダがあるのか」「ボトルネックはどこか」といった視点で見直し、改善案を策定・実行します。
BPMツールは、こうした業務の可視化や再設計、さらには改善効果のシミュレーション・モニタリングまでを支援する機能を備えており、企業の業務改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に欠かせないツールです。
ワークフローシステムとBPMツールの共通点
ここまで解説してきたとおり、ワークフローシステムとBPMツールは目的や適用範囲に違いがあるものの、業務の流れを効率化するためのツールという点で共通しています。実際に、両者には以下のような共通機能が搭載されています。
- ■共通する機能
- ・ワークフロー機能:処理の流れに従ってタスクを次の担当者へ引き継ぐ
- ・フォーム作成機能:入力内容に応じた申請フォームを柔軟に作成可能
- ・データ連携機能:他システムから情報を取り込み、申請・処理を効率化
これらの基本機能に加えて、各ツールにはそれぞれ独自の強みや特徴的な機能があります。次に、各ツールならではの機能を詳しく見ていきましょう。
ワークフローシステムのそのほかの機能
ワークフローシステムには、申請・承認業務をよりスムーズに進めるための補助機能が搭載されています。
- ●承認ルート設定機能:申請内容に応じて複雑な承認経路を自動的に構築
- ●ステータス管理・通知機能:進捗状況をリアルタイムで把握し、滞留や承認漏れを防止
- ●スマホ対応:モバイル環境でも申請・承認が可能になり、業務の停滞を防ぐ
- ●文書管理機能:決裁済み書類をシステム上で自動仕分け・保存し、検索性や監査対応を向上
これらの機能によって、現場部門の業務が滞りなく進み、申請者・承認者双方の負担軽減につながります。ワークフローシステムの機能は以下の記事でも解説しているので、こちらも一読ください。
BPMツールのそのほかの機能
BPMツールは、業務プロセス全体の可視化・分析・改善を支援するための高度な機能を備えています。
- ●モデリング機能:業務フローを図式化し、現状のプロセス構造を把握・再設計
- ●シミュレーション機能:改善後の業務フローを仮想実行し、成果や課題を事前検証
- ●モニタリング機能:業務の実行状況をリアルタイムで追跡し、PDCAサイクルを継続支援
これらの機能により、属人化した業務の標準化や全社的な業務改革の推進が可能になります。業務処理の自動化にとどまらず、「業務のあり方そのものを再設計する」という視点がBPMツールの大きな特徴です。
BPMツールの機能について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
ワークフローシステムとBPMツールの導入メリット
ここまで、ワークフローシステムとBPMツールの共通点や違いを解説してきました。では、実際に導入する際、どちらを選ぶべきなのでしょうか。ここでは、両者の導入メリットを整理し、どのような課題に対してどちらが適しているかを紹介します。
ワークフローシステムの導入メリット:決裁までがスピーディーになる
ワークフローシステムを導入する最大のメリットは、申請から承認・決裁までの流れを電子化・自動化し、業務処理をスピーディーにできる点です。
申請フォームの作成や承認ルートの自動設定により、業務フローが明確になり、無駄なやり取りや滞留がなくなります。また、スマートフォンやタブレットに対応したシステムを使えば、外出先からでも承認作業が可能になるため、時間や場所にとらわれない柔軟な対応が実現します。
さらに、決裁済みの書類はシステム上で自動保存・管理されるため、書類の検索性や監査対応力も向上します。
こんな企業におすすめ
「申請や承認に時間がかかる」「承認者が不在で業務が止まりやすい」「承認漏れや不正申請を防ぎたい」といった課題を抱える企業には、ワークフローシステムの導入が効果的です。
以下の記事では、導入メリットやおすすめ製品を特徴別に紹介しています。導入を検討中の方はぜひご覧ください。
BPMツールの導入メリット:業務を標準化し全体最適化を実現できる
BPMツールの導入によって得られる最大のメリットは、業務プロセス全体を可視化・分析し、継続的な改善につなげられることです。
業務の流れをモデリングし、どこでムダが生じているのか、どの業務がボトルネックになっているのかを把握できます。さらに、改善後のプロセスのシミュレーションや、実行状況のモニタリングも可能です。
これにより、属人化していた業務の標準化が進み、部門間の連携も強化。その結果、企業全体の生産性向上と業務の最適化が実現します。
こんな企業におすすめ
「現状の業務プロセスを可視化して改善したい」「属人化した業務を標準化したい」「部門をまたいだ業務改善を進めたい」と考える企業にとって、BPMツールは強力な支援ツールになります。
以下の記事では、BPMツールの比較や選び方、導入メリットについて詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
ワークフローシステムとBPMツールは、どちらも業務の流れを効率化するという点は共通していますが、目的や適用範囲には大きな違いがあります。
ワークフローシステムは、「申請・承認・決裁」といった定型的な手続きをスピーディーかつ確実に進めるためのツールです。
一方で、BPMツールは、申請業務にとどまらず、部門をまたいだ業務プロセス全体を可視化・分析し、継続的に改善することを目的としたツールです。全社的な最適化や業務改革を進めたい企業に適しています。
自社が抱える課題や改善したい業務範囲を踏まえ、どちらのシステムがより効果的かを検討しましょう。
